「データは新しい石油(Data is the new oil)」といわれているが、企業にはさまざまなデータ、あるいはデータ化されていないアナログ情報が活用されずに眠っている。
米調査会社IDCと米HDD製造会社Seagate Technologyが2018年に発表したレポート“Data Age 2025 - The Digitalization of the World”によると、2018年に33ZB(ゼタバイト=1兆GB)だった世界のデータ量は、2025年には5倍超の175ZB(Blu-rayディスク7兆枚の記憶容量に相当)にまで膨れ上がる。
中でも、リアルタイムデータ(製造機械のセンサー情報やSNSで発信される情報など)の伸びが顕著で、全データ量に占めるリアルタイムデータの構成比は、2017年の15%から、2025年には30%になると予想されている。インターネットにつながっている60億人(世界人口の75%)が18秒に1回超のデータ交換を行い、世界中でつながる数十億台のIoTデバイスが90ZB以上のデータを創出する。これが“Data Age 2025”の予想する世界だ。
「データは新しい石油(Data is the new oil)」といわれる。言い得て妙だ。データ(石油)は世界中に存在するが、収集(採掘)し、分析(精製)してこそ価値を生む。しかし、企業にはさまざまなデータ、あるいはデータ化されていないアナログ情報が活用されずに眠っている。
データは企業活動の集積。「仮説」などという曖昧なものでなく、顧客が、現場が、経営陣が積み重ねた「事実」だ。これが、精製(分析)されずに、あるいは採掘(収集)すらされずに、文字通り“死蔵”されている。
一方、滑稽なことに、外部DB検索、Webアンケート調査、エキスパートインタビューといった「事実に近い何か」の「一部」を基に、各企業は地頭力の高い人財に「仮説」という名の演繹解導出に膨大な工数を投入させている。もちろん、その演繹解の確からしさは、単なる思い付きのそれを大きく上回る。だが、部分情報に基づく「仮説」にすぎない。だから、実効性に不安が残り、いつまでたっても実行力を伴わない。
この(一見高付加価値だが、その実は)低付加価値な演繹解導出作業に「ノー」を突きつけるのが、データ資本主義の本質だ。情報技術の進化は、大量データ(「事実」の集積)を機械学習アルゴリズムにかけることで、人間の思考量では到底到達し得ない相関関係の発見と初期仮説群の導出を可能にした。
「事実に近い何か」の「一部」に基づく演繹解と、大量の「事実」に基づく帰納解。どちらが実効的かは論じるまでもない。こう言うと必ず、「AIはツールにすぎない」「因果の説明をできない仮説は行動につながらない」といった類の反論が出てくる。半分正しい。が、あえて言おう。その時代遅れの「上から目線」こそ、データ資本主義時代では致命的だ。
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明治学院大学 経済学部准教授