前の状態に戻すのではなく新しい形に作り上げていく。それは「前例のない事をするチャンス」でもある。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」バックナンバーへ。
「リクルートOBのすごいまちづくり」の執筆の話をもらった時、うれしい反面「なんて、こっぱずかしい名前の本なんだ!」と正直思いました。ちょっと自画自賛チックすぎないか? と。
本が出来上がって皆さんの実例を見て共通する所は、「前例がない事」をやる大切さと気付きました。ああ、アレだとニヤリ。リクルートの旧社訓「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」ですね。
しかし、世の中は新型コロナショックの真っただ中!
「国内のインバウンドはおろか、観光業は全滅」「インバウンドに頼るからこんな事に」と、さまざまな声もあります。ええ。私も頭が痛いです。
だからこそ、今「自ら機会を創り出す」必要があるのではないでしょうか。前の状態に戻すのではなく、新しい形に作り上げていくことが必要。ということはまた「前例のない事をするチャンス」でもあります。
私のパートでは「ネット動画で地域の魅力を海外に発信」を書きました。外国人が日本のビックリした事を紹介するネット動画「ビックリ日本」はYouTubeでチャンネル登録者数が12万人を超えました。
日本語で話すところは中国語の字幕を入れ、中国語で話すところは日本語で字幕を入れ、どちらかの国の言葉が分かると楽しめる動画になっています。中には「日本語を勉強したい中華圏の人」や「中国語を勉強したい日本人」もファンになり、語学学校の教材として使われる事もしばしばありました。
そこで、ずっと続けてきた中で分かった動画再生回数を上げるコツがこちらです。
1、相手(外国人)の目線で伝える
2、チャンネルの動画に一貫性がある(テーマに沿った動画をそろえている)
3、定期的に新しい動画をアップロードしている
4、サムネイルのインパクトは大切(きれいなだけではダメ)
5、タイトルの付け方を工夫する(長すぎると後ろが表示されない)
もっと新しい手法もあるでしょうが、基本のポイントとしてはどれも大切だと思います。奇をてらってバズる事を期待したり、あまり流行に振り回されたりするのではなく「視聴者に大切なことが伝わっているか」を忘れないようにしながら、いろいろ試してみてもいいかもしれません。
また、ビックリ日本は、YouTubeだけでなくYOUKU(中国の動画サイト)など多数の動画サイトで展開しました。1ソースマルチユース。同じ番組を複数のメディアを使って配信するのは、大変効率が良いと思います。
「ビックリ日本」と並行してインバウンド向けの観光PR動画も数多く制作してきました。中でも好評だったのは、2014年に有馬温泉の海外PR動画を制作した際、台湾でヒットした映画「KANO」の出演者に有馬温泉を紹介してもらったもの。
KANOは日本統治時代に甲子園で準優勝した台湾の高校球児たちの実話をもとに作られた映画です。このPR動画をネットと旅行博などのイベントで流したところ、台湾の大手旅行代理店に「有馬温泉は台湾で最も有名な日本の温泉地になった」と評価されました。
映画のロケ地を観光PRに使う事はよくある事かもしれません。ただ、「KANO」は有馬温泉と全く関係なく、直接結び付きはありません。有馬温泉+甲子園をセットにして初めて「KANO」とのコラボが成立したのです。
有馬温泉だけのPRとしては成立しなかったと思いますが、甲子園もまたインバウンド集客を考えていたので渡りに舟と全面的に協力してくれました。日本での映画公開の時期とも重なり「KANO」にとってもPRになります。これまたWin-Win-Winの関係となり前例のないPR作戦になりました。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授