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» 2020年09月28日 07時08分 公開

視点:Value Webの衝撃――Value Chainからの大変化 (1/2)

左から右に一直線に流れるValue Chainは、じきに過去のものとなる。これからは、Value Webの時代がやってくる。一直線ではなく、蜘蛛の巣のような構造になるのだ。

[中野大亮(ローランド・ベルガー),ITmedia]
Roland Berger

1、Value Webとはなにか

 各種原材料、調達、製造、マーケティング、物流、販売、メンテナンス。左から右に一直線に流れるValue Chainは、じきに過去のものとなる。これからは、つくりたいモノ・コトに対して、必要な原材料・機能を一つのテーブルの上で適切に選択・組み合わせをして、エンドユーザーに製品・サービスを届けるValue Webの時代がやってくる。一直線ではなく、蜘蛛の巣のような構造になるのだ。(図A参照)

図A:Value Web

 例えば、とあるアパレル企業がオリジナルデザインのポロシャツ1万着を作りたいとする。これまでは、そのデザインを書き上げ、型を作り、スペックを設定し、それをベースに工場に発注していた。工場は、生地を調達するが、微妙に風合いが異なるため、いちいちアパレル企業に相談。ボタンに関してもそうだ。生地は繊維問屋を通じて調達するが、取り扱いも限られる。もっとさまざまな生地から選びたいが、問屋の開拓が面倒だ。

 これからはValue Webにアパレル企業がデザインとロット数を投げる。すると、Value Webが適切な縫製工場、生地、副資材などを組み合わせで提案してくれる。また、完全にデザインを再現できない場合は、別の生地オプションも提示される。提案が必要なければ、自分で選ぶことも可能だ。結果的に、サプライチェーンにかかるコストとリードタイムが圧倒的に低減される。

 ここでは簡易的に、エンドユーザーにモノ・コトを提供したい企画機能をつかさどるプレイヤーを「事業者」、Value Web全体を構築し運営するプレイヤーを「オーケストレーター」、Value Webに乗っている一つ一つの機能を担っている各プレイヤーを「プロバイダー」と呼ぶことにしよう。「オーケストレーター」は、上記アパレルの例の通り、川上から川下までの「プロバイダー」の能力・保有情報を見える化して集約し、組み合わせることができるプラットフォームを構築する役割を担う。

2、その圧倒的な利点

 「事業者」にとっては、個々のエンドユーザーの欲しい製品を把握し、いち早く安く製造・供給して、それを以降の企画にフィードバックするという多産多死のPDCAの高速回転をすることができるようになる。「オーケストレーター」が「プロバイダー」の能力を見える化してくれているため、その開拓・品質チェックのコストが低減するためだ。加えて、これまで取引関係がなかった魅力的なプロバイダーとの関係ができ、エンドユーザーが望むものあるいはその一歩先を行く企画を実現し、それを早く試せる。

 加えて、プロバイダーにとっては、これまで自身で行うのが当たり前であった発注・検品・在庫管理等のプロセスが代替されることによってコストの削減及びリードタイム短縮のメリットがある。また、能力の見える化に伴う報酬の適正化、更には浮いたリソースを有効活用して稼働率を上げる・新規事業に取り組むことで収益を拡大できる可能性がある。

 無論、上記によって、エンドユーザーにとっては、自身が欲しいもの ・潜在的に欲しいものを早いタイミングで安く手に入れることができるようになる。

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