携帯料金引き下げとともに菅政権目玉政策となった地銀再編。背景にあるのは地銀の苦境だ。
2020年11月27日、主務大臣の認可を受けて行う地域基盤企業の合併に独占禁止法を適用しない特例法が施行された。地方の暮らしや経済を支える金融・交通サービスを維持することを目的とした10年間の時限措置で、地域銀行(地方銀行及び第二地方銀行)(以下、地銀と総称)や路線バス事業者の経営統合が対象となる。
携帯料金引き下げとともに菅政権目玉政策となった地銀再編。背景にあるのは地銀の苦境だ。2020年3月期決算が純利益減益(前年同期比)または赤字となった上場地銀は7割超、2021年9月期決算でも6割超にのぼる。
日経平均が終値3万8915円87銭(1989年12月29日終値)の最高値を記録した1990年3月期、金融・保険業を除く全産業の金融機関借入金総額は410兆円、対純資産比率は188.8%に達した。自己資本比率は19.0%。財務レバレッジを効かせた積極経営の証だ。翻って足元2020年3月期の自己資本比率は42.1%。借入金総額366兆円、対純資産比率48.1%。金融機関依存の退潮は、業界の構造課題に他ならない。(図A1参照)
2000年3月期末0.57%だった預貸金利鞘も、2020年3月期末時点で0.20%。資金利益を直撃している。加えて、2016年2月から続くマイナス金利政策。マイナス金利を0.1%深掘ると、地方銀行のコア業務純益が21%減少するとの試算もある。
かかる環境下、過去30年で国内金融機関は半減。大手銀行は7グループに再編され、第二地方銀行と信用金庫はともに44%減少、信用組合は65%減少した。一方、地方銀行は、2020年10月の十八銀行と親和銀行の合併まで、1984年来の64行体制を維持してきた。過当競争回避が構造不況打開の「一の矢」であることは間違いない。
総資産とOHR(Over Head Ratio:営業経費÷業務粗利益)は逆相関関係にある。地銀のOHRは70.2%。対する都市銀行は 65.1%。 隣接地銀の経営統合は、中期的には OHR改善、ひいては業務粗利益改善をもたらし得る。それでも、得られる効果は限定的だ。 2020年 3月期末の貸出金残高は、都市銀行 5行で 277兆円、対する地銀は 102行で 270兆円。預金残高は447兆円に対して 341兆円。地銀数行が経営統合しても、競争環境の抜本改善には程遠い。 ※1
※1)1行集約しても本業利益で営業経費を賄えない地域 23県(金融庁『地域金融の課題と競争の在り方』(2018年 4月11日))
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明治学院大学 経済学部准教授