第2の習慣 組織のことを考えるドラッカーが教える成果をあげる人の8つの習慣(2/2 ページ)

» 2021年01月26日 07時11分 公開
[山下淳一郎ITmedia]
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組織にとってよいことは何かを考える

 成果をあげるために、私たちは、どんな習慣を身に付ければいいのだろうか。

 ドラッカーはこう言っている。

成果をあげるために身に付けるべき第2の習慣、第1のものに劣らず大切な習慣が、組織にとってよいことは何かを考えることである。株主、従業員、役員のためによいことは何かを考えるのではない。もちろん、株主、従業員、役員は支持を得、あるいは、同意を得るべき重要なステークスホルダー(関係当事者)である。しかし、そもそも組織としての会社にとってよいことでないかぎり、他のいかなるステークスホルダーにとってよいこととはなりえない。

ピーター・ドラッカー

 組織にとってよいことを考えるとは、自分のことは考えないということだ。自部門の都合を考えないということである。組織全体に立って考え、組織全体に立って発言し、組織全体に立った決定をしよう、ということだ。

間違った決定をくださないために

 ある企業で役員の皆さんにドラッカーの研修をした。研修は1年かけて月に1回行うペースで進めていた。研修が中盤に差し掛かかった頃、社長が株主から解任された。社長は何か間違いをしたわけではない。売上の向上、企業価値の向上、人材の育成に力を注いでいた。組織にとってよいことは何かを考えたうえで仕事に専念していた。

 株主は、新しい社長を送り込んできた。人材育成に使うお金も無駄遣いという極端な考えに陥っていた。とにもかくにも、外に出ていくお金をゼロにしようと考え、必要なものまでもがコストカットの対象となり、人材育成を目的とした研修は中断となった。従業員は、株主の言いなりでしかない新任の社長に幻滅し、士気は下がった。売上は上がらなくなり、会社の魅力はなくなった。就職希望者も減った。結局、株主から送り込まれた新任の社長は、何の成果もあげられなかった。ただ、株主の言いなりになっているだけだった。

 保身に走り自分たちにとってよいことを考える。あるいは、責任を忘れて株主にとってよいことを考える。責任ある立場の人が、間違った決定を下せば、組織は急速に衰退していく。 その恐ろしさを身をもって知った。会社にとってよいことでないかぎり、株主、従業員、役員にとってよいこととはなりえない。ドラッカーの言葉が胸をえぐった。

組織の繁栄に責任をもつエグゼクティブ

 間違った決定をくださないために、そして、成果をあげるために何を考えなければならないのだろうか。

 ドラッカーはこう言っている。

成果をあげるには、自らの果たすべき貢献を考えなければならない。手元の仕事から顔を上げ目標に目を向ける。組織の成果に影響を与える貢献は何かを問う。そして責任を中心に捉える。

ピーター・ドラッカー

 成果をあげる人は、「組織にとってよいことは何か」という視点で考えなければならない。最後に、次のブランクにあなたの答えを入れてほしい。成果をあげる人はそれを習慣にしている。

 私の組織にとってよいことで、私が行動に移すべきことは

____________________________________である。

(参考文献:次の書籍の中から一部引用させていただいた。『経営者の条件』)

著者プロフィール:山下淳一郎 ドラッカー専門の経営チームコンサルタント

ドラッカー専門の経営チームコンサルティングファーム トップマネジメント

東京都渋谷区出身。ドラッカーコンサルティング歴約33年。外資系コンサルティング会社勤務時、企業向けにドラッカーを実践する支援を行う。中小企業の役員と上場企業の役員を経て、ドラッカーの理論に基づいた経営チームをつくるコンサルティングを行う、トップマネジメントを設立。現在は上場企業に「経営チームの研修」「経営幹部育成の研修」「後継者育成の研修」を行っている。 

著書に『ドラッカーが教える最強の後継者の育て方』(同友館)、『ドラッカー5つの質問』(あさ出版)、『新版 ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方 』(同友館)、『日本に来たドラッカー 初来日編』(同友館)、『ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方 』(総合法令出版)、『ドラッカーのセミナー』(Kindle)、『ドラッカーが教える最強の事業承継の進め方』(Kindle)がある。主な連載に『ドラッカーに学ぶ成功する経営チームの作り方』(ITmedia エグゼクティブ)がある。ほか多数。


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