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» 2021年12月16日 07時10分 公開

第3回:アートとスモールハピネス仕事と自分を成長させる新しいキーワード「スモール・ハピネス」(1/2 ページ)

ネガティブなことや、つなぎから解き放たれることからでも、スモールハピネスが生まれる。

[キャメル・ヤマモト,ITmedia]

 今回は、ネガティブなことや、つなぎから解き放たれることからでも、スモールハピネスが生まれるという話をします。

ネガティブなことからでもスモールハピネスを生み出すことができる

 絵美さんは会社に2年勤めたところで、もともとやりたかったアートの道を諦めきれず、美術系大学の大学院に入りました。絵美さんはこんな話をしました。

 私は、何かを行っていてその区切りがついて、それまで存在しなかったものが存在したと思えるときにポジティブな気持ちになります。例えば、誰かと会話していて、会話で区切りがついて何かが分かればちょっとうれしくなります。自分が書いている文章でも区切りがつくと気持ちもすっきりします。人と関わっている中でそれまでなかった「関係性」が誕生した瞬間も進んだと感じます。今もっとも時間をかけているのは、アート作品の制作ですが、これも制作の節目をクリアするたびに、何かできたぞという小さな手応えを感じます

 (太字の部分が示すように)ポジティブな気持ちをさまざまな言葉で表現しましたが、共通しているのは、自分が行っていることで区切りがついて何かが分かったときに小さなハピネスが生じるということです。

 キャメルからスモールハピネスについて説明すると、絵美さんは、こう話しました。

 私には常に何かを探すという原初的な欲求があって、その欲求にそって生きています。アートもその延長線上にあります。そういうふうに生きているおかげで、私は日々スモールハピネスに出会います。

  • 道端に花が咲いているのを見つけるとうれしい。
  • 河原でお気に入りの形の石が見つかると、その石がスモールハピネスをくれます。
  • 朝の陽の光が壁に反射して、家の中に入ってくると、幸せな気持ちになります。
  • 道端のガラスの破片が太陽の光を反射しているのを見てもハッピイになります。
  • 自分が着ている服と友達の服の色がかぶっていて2人で笑えたときも幸せです。
  • 卵の黄身が双子だったら、それもちょっとしたハピネスにつながります。

 キャメルから、こういうふうに感じることには何かきっかけがあったのですか、とたずねたときの絵美さんの答えです。

 私はもともとネガティブな性格の子供で、小・中学校ではいじめられていました。中学2年のとき、母親から、「マイナスの力はプラスの力にもなる。がんばっていてネガティブなら、がんばっていてポジティブにもなれるよ」といわれました。

 母の助言のタイミングもよかったのか、私は確かにそうだと思うことができて、自分を無理にネガティブに洗脳していたことに気付きました。そして、逆をやってみよう、実験してみようと思いました。

 具体的には、自分から進んで人とおしゃべりをするなど、それまで自分がやりたくなかったことをやるようにしました。やってみると、負担はあったのですが意外にできました。次第に、ものの受け止め方にはネガティブな受け止め方だけではなくて、幾通りもあって、考え方次第だと分かってきました。それだったらものごとはポジティブに受け止める方がいいと考えるようになりました。

 そこからもう一歩進んで、自分の中で生まれる小さな喜びを見逃さないようにしました。例えば駅で発車間際の電車めがけて小走りをしている人を見ると、そのときの様子でいろいろなことを思います。何か重要なことがあって一生懸命に生きているエネルギーを感じることもできるし、どうせ3分も待てば次の電車が来るのに小走りをするなんて人間って面白い生き物だと達観することもあるし、けなげに生きていて愛らしいと思うこともあります。

 こういう感じ方はさまざまな気付きで、気付きは小さな驚きで、キャメルさん風にいえば全てスモールハピネスにつながりますよね。以上のことを言いかえるとネガティブ一色の捉え方から解放されて、世の中のことを面白い視点で捉えることができるようになっていきました。

 これは、無理やりポジティブになろうとして、ネガティブから脱した第一歩でした。次の一歩では、ポジティブとネガティブの両方を考えるようにしました。もともとネガティブな性格だった私にはネガティブな自分が残っていますから、そんな自分にも向き合うようにしました。ネガティブな感情や考えが出てきたらそれを拾ってメモ帳などに文字や絵で表現することにしました。ポジティブなことも同じように表現しました。

 そういう中で、なんとなく人の絵を描くことが多くなりました。高校では美術部に入っていたのですが、高校3年になって卒業に向けて何かを残そうと思って100人の学友にお願いして一人ずつの絵を描きました。いわば知人の絵を描いたのですが、その次は見知らぬ人の絵を描くようになります。

 例えば、街で見た親子の様子を覚えておいて、家に帰ってから、その場にある紙や新聞の上にでもさっと描きます。カフェにいても、大学院にいても、自分と会話をした人も、会話をしていない人も観察します。特に、誰かから見られていることを意識せずに小さなことでも何かに一生懸命とりくんでいる姿が一番輝いて見えます。人間くさいほど、格好をつけていないほど、美しく見えます。すごいといわれている人にも必ず足りないところがあって、むしろそういうところにひかれます。

 それに気付くと、今度は自分をそういう人たちの姿に重ねて、「格好をつけずにいたい、むしろ格好悪くありたい」とか、「人の目は気にせず一生懸命とりくんでいる状態でいたい」とか思うようになってきました。

 絵美さんの話をきいていて、私(キャメル)の中で3つの気付きが連鎖的に生じました。

  • スモールハピネスは、ポジティブなことで味わうというのが基本だが、慣れてきたら常識的にはネガティブなことからでもスモールハピネスを得ることができる。
  • さらに、他人にも自分にも格好をつけないというのが意外に大切だ。
  • とにもかくにも、絵美さんのように何かに熱中して生きているとスモールハピネスに恵まれやすい。
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