これまで中間管理職を「マネジャー」と呼ぶことが多かったのですが、英語のmanagementの本来の意味は「経営」であり「管理」ではありません。
しかし、ピラミッド型の組織においては上位方針を部下に伝え、部下の時間と業務を管理することが中間管理職の主な役割でした。上位方針をそのまま実行すればよく、実質的な権限はさほど与えられてこなかったし、その必要もなかったのです。そのため「管理職」という名称が定着したのだと思います。
しかし、「チーム経営責任者(TMO)」は違います。より多くの権限と責任を与えられ、部門やチームの経営に当たります。
人的資本の世界観においては、人と人との関係はフラットです。
あなたが、ある部門の管理職だとします。勤続年数もそれなりに長く「ベテラン」と呼ばれ、課長や部長といった立派な役職も持っています。
しかし、部門のメンバーにとってはあなたの勤続年数も肩書もほぼ関係ありません。あなたに対する評価基準は「どんなマネジメント能力を持って利益に貢献しているか」という点です。
上司も部下も、お互いが共通のゴールに向かう人的資本。
上下関係ではなく、フェアなヨコの関係なのです。
「チーム経営責任者(TMO)」はどのような能力を身に付ければよいのでしょうか。それはひと言でいえば「チーム経営力」です。詳細なハウツーまでは書ききれませんが、ここでは7つの能力の要点を紹介しましょう。
キャリア支援とは、社内での出世やポジション獲得ではなく、メンバーの人生の成功です。自社だけに縛られず、本人が望む生き方をともに実現しようとするリーダーに人は付いてきます。逆に退職リスクばかりを気にするリーダーからは、かえって人が離れていくでしょう。
人は自分の弱みはすぐに気になるものの、強みには気が付きにくいものです。相手の弱みを正して仕組みに当てはめていくのではなく、人の価値を一緒に見つけて、強みを発揮できる仕事とマッチングさせるのが人的資本を活かすリーダーです。
仕事を「丸投げされた」のではなく「任せてもらった」。メンバーがそう感じるためには、適度にストレッチな仕事を見極め、期待と権限を手渡すテクニックが必要です。
チームに貢献する「チームエンゲージメント」と仕事に没頭する「ワークエンゲージメント」。両方を高めて、チームが同じ目標に向かって高いパフォーマンスを発揮するための能力です。
人は大量の候補者から採用するのではなく、適した人材をピンポイントで獲得するものです。「アルムナイ」や「リファラル」のように、具体的な能力を把握している人材と常につながりを持ち、機会に応じて獲得する準備が必要です。
新しいメンバーをチームに馴染ませるのではなく、チーム自体をその都度アップデートしていく力です。過去や経験に固執しすぎず、ときにはアンラーニングやリスキリングを促す必要があります。
会社の戦略や現状とチームの活動をリンクさせる力です。
私がTMOと称しているチームリーダーは、これまでの中間管理職とはまったく異なる機能として、企業や業界の枠を超えて求められるようになるでしょう。
TMOはチーム経営のプロフェッショナルです。必ずしもその業界や企業の専門家であるわけではありません。優れたプレイヤーである必要もありません。自分より優れた人たちの能力を活かして、チームとして成果を出すプロなのです。
近年、CEO(最高経営責任者:Chief Executive Officer)やCOO(最高執行責任者:Chief Operating Officer)として、社内の生え抜きではなくプロ経営者を外部から招く企業が増えています。企業を取り巻く環境が変化し、企業経営がより複雑で高度になっているからです。
それと同様に、チームを経営するスキルは組織を越えて発揮できる「ポータブルスキル」になり、「チーム経営責任者(TMO)」は新たなキャリアパスの一つにもなるでしょう。
これまでの中間管理職には魅力を感じないと言っている若い世代にとっても、経営人材への登竜門となるのがTMOです。
大手企業の中には、優秀な若手を子会社や関連会社へ経営幹部として出向させ、経営人材としての経験を積ませるケースがよく見られます。TMO はそれと同じことを社内の部門やチームレベルで行うのです。
株式会社NEWONE 代表取締役社長
大阪大学人間科学部卒業。 アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。2002年、株式会社シェイク入社。企業研修事業の立ち上げ、商品開発責任者としてプログラム開発に従事。新人~経営層までファシリテーターを実施。 2015年、代表取締役に就任。2017年9月、これからの働き方をリードすることを目的に、生産性向上やイノベーションなどを支援する株式会社NEWONEを設立。 米国CCE.Inc.認定 キャリアカウンセラー
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授