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» 2023年01月17日 07時02分 公開

「レッドガス」時代の羅針盤【第一章】「色分け」されたエネルギーがもたらす事業機会(1/2 ページ)

これまでエネルギーはコモディティ商品の典型例といえるものだったが、全世界的な脱炭素化の必要性から、エネルギーはその作られ方に注目が集まっている。

[渡邉諒也ITmedia]
Roland Berger

エネルギーの「色分け」の必要性

 これまでエネルギーはコモディティ商品の典型例といえるものだった。例えば、電気は誰がどこで使うものも同じであり、電気に「色」はない。しかし、全世界的な脱炭素化の必要性から、エネルギーはその作られ方に注目が集まっている。その結果として、エネルギーは、ブルー、グリーン、グレーなど、製造プロセスにおけるCO2の排出量の違いによって、新たに区分がされるようになった。色のないエネルギーに「色付け」がされることになったのである。

 需要家側のエネルギーに対するニーズにも変化が生まれている。従来は、需要家が購入するエネルギー商品には大きな違いはなく、ニーズも価格中心に単一的であった。ところが、グローバルでの脱炭素化の動きは、需要家側の意識の変化を引き起こし、脱炭素への感度の高い業界では、グリーンエネルギーの活用を積極的に志向している。他方で、当然ながら、安価な従来型エネルギーを引き続き求める需要家も一定数存在する。このように、エネルギーは、その作られ方で区分されつつあり、また需要側のニーズも多様化している。

 エネルギーの「色分け」の必要性をもたらす要因は、この「グリーン」性の観点だけではない。ウクライナ問題以降、欧州はロシア産LNGからの脱却を進めている。産出国に、地域紛争・人道問題等の観点での懸念が存在する「レッド」資源の輸入・利用を回避する動き起こっているのだ。従来、エネルギーは安定調達が重要視されてきたが、足元では、自国のエネルギーの安全保障に対するリスクを負ってでも、「レッド」性資源を避けようとする動きが出てきている。

トレーサビリティの必要性とその手法

 上記の観点から、今後、エネルギーのトレーサビリティを担保することが、ますます重要となってくる。グリーン性の視点では、供給側は、エネルギーがどのような過程を経て製造されたものなのか、需要家向けに明らかにする必要が出てくる。また、レッド性の視点では、どの地域・主体によって産出された資源なのかが、これまで以上に注目を集めることになる。エネルギーの「色」が、サプライチェーンを通じて継続的に見える化されている必要性が高まるのだ。

 グリーン性の観点からは、エネルギーのトレーサビリティの手法はバーチャルなものから、物理的なものまで存在する。バーチャルな手法としては、証書型やブロックチェーンを活用した取引が該当する。これらは、グリーン電力証書制度のように、需要家が、電気自体とは切り離されたグリーン電力価値を証書等の形で保有できる仕組みや、ブロックチェーン技術を用いて、グリーンエネルギーの供給者とそれを購入したい需要家をマッチングし、その取引成立を証明するものである。

 他方、より物理的なものとしては、再エネ発電設備等とその需要家を直接送電線などで結ぶ方法が存在する。この手法では再エネ由来の電力等は、化石由来のものと混じることがないので、再エネ由来の証明が容易に可能となる。このグリッドで直接接続されたエネルギーは、トレーサビリティとしては最も明確なため、自社の使用エネルギーのグリーン性を強くアピールしたい企業にとっては、最も有効な手段となる可能性が考えられる。

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