経営者なら知るべき「成果の高い社員は何をしているのか」「2:6:2」の法則でできない2割の社員を叱るだけでは意味がない(1/2 ページ)

優秀な社員はなぜ優秀なのかを可視化できるかどうか、それが社員の成長、そして業績向上のポイント。

» 2023年01月25日 07時04分 公開
[松本順市ITmedia]

社員の人的資本力は50%しか発揮できていません

 経営者は、もっと業績を上げるためにはどうしたらよいだろうかと考えて、書籍やセミナーでそのヒントやノウハウをつかもうとしています。しかし最も大切なことに気が付いていません。

 会社の業績は外部から新しいことを学ばなくても、現状から最低1.5倍は伸ばすことができます。そのヒントは社外にはありません。社内にあるのです。その根拠となるのが「組織原則2:6:2」です。全ての会社に高い成果を上げている優秀な社員が2割、まあまあの成果の社員が6割、これから成果を上げる2割の社員がいます。これは業績を伸ばす方法が社内にあることを示しています。全社員が今いる優秀な社員のように成長すればいいのです。この組織原則2:6:2は社員の相対評価から生まれています。そして組織原則2:6:2は規模や業種に関係なく、どのような会社にもあります。

組織原則「2:6:2」の法則はどんな会社にもある

 私は44年前、街の小さな魚屋に入社しました。当時はパート・アルバイトも含めて従業員30人の会社で、年商は3億円でした。

 決して優秀な社員が集まっていたわけではありません。採用担当だった私はやる気のない社員でも採用しなければなりませんでした。なぜなら3Kの不況業種で賃金も安かったため、応募者が集まらず、残念ながらやる気のある社員を採用することができませんでした。

 一般的には優秀ではない社員の集まりであったその組織の中にも、組織原則2:6:2はありました。その会社が成長して、今では東証プライムに上場しています。その上場する前の、売上高176億円の規模になった時ですら、組織原則2:6:2はありました。売り上げが3億円から176億円に伸びたその理由は、優秀な社員を採用したからだろうと考える人はいるかもしれません。そうではありません。在職社員が成長した結果の業績です。業績が向上したときでも組織原則2:6:2があったのです。

 ではこの年商3億円の会社がなぜ上場できたのかを説明したいと思います。それは組織原則2:6:2を活用したからです。

 世の中には組織原則2:6:2を活用している会社と活用していない会社があります。仮に業績評価会議で成果の低い社員を上司が叱っていたら、間違いなくこの組織原則を活用していない会社といえるでしょう。実にもったいないことです。

 優秀な社員はなぜ優秀なのかを可視化できるかどうか、それが社員の成長、そして業績向上のポイントです。

「優秀な社員がなぜ優秀なのか」を可視化する理由

 それでは、なぜこの組織原則2:6:2を活用したら簡単に業績が向上するのか考えてみましょう。

 成果が高い社員は優秀だと褒められています。ここまではどの会社でも同じでしょう。大切なのは、なぜこの優秀な社員が高い成果を上げているのかです。

 優秀な社員が成果を上げている理由は3つしかありません。(1)成果を上げるための重要業務(やるべきこと)をやっていること、(2)その重要業務を遂行するための知識技術を持っていること、そして(3)会社にふさわしい勤務態度で仕事をしていることです。

 そのため高い成果を上げている社員は、この3つの要素で説明ができます。成果の違いはこの3つのプロセスの違いといえます。これが分かったら「死ぬ気で頑張れ」のような精神論は必要ありません。

 この優秀な社員のプロセスは、会社の宝物です。ところが、優秀な社員の成果が高いことは分かっていても、そのプロセスを瞬時に説明できた経営者は今まで1人もいません。

 弊社は今まで1352社の人事制度のコンサルティングをしました。1352社1352種類の人事制度の構築を指導しました。つまり、人事制度は1社1社異なります。そしてこの指導実績数は日本一です。

 弊社の人事制度のつくり方はちょっと変わっていて、優秀な社員を可視化するところから始めます。つまり、宝物を使えるようにすることです。宝物が可視化されると経営者は自信がわくようです。「我が社の社員はスゴイ」ことが分かるからです。通常の会社ではこの宝物は宝の持ち腐れ状態になっています。

ダメな社員を叱るのではなく、優秀な社員をもとに全社員を優秀にすることが必要

 一度社員に質問してもらいたいことがあります。それは、「あなたはこの会社で優秀な社員になりたいですか?」という質問です。間違いなく全員「はい」と答えるでしょう。

 それなのに成果が上がっていないのは上司の指導の問題です。ひいては上司の指導をしていない会社の問題でしょう。それを棚に上げて「成果が低い」と叱ることでどのような効果があるのでしょうか。「叱ったら社員が成果を上げるようになりました」という事例をこの44年間聞いたことがありません。それでもこの成果の低い社員を叱ることを繰り返すのでしょうか。

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