経営者なら知るべき「成果の高い社員は何をしているのか」「2:6:2」の法則でできない2割の社員を叱るだけでは意味がない(2/2 ページ)

» 2023年01月25日 07時04分 公開
[松本順市ITmedia]
前のページへ 1|2       

 叱ったのは「成果を上げてほしい」という思いからだとすれば、良い方法があります。それは高い成果を上げている社員のプロセスを可視化して共有することです。

 成果の高い社員は成果を上げるための業務をやっています。いわゆる重要業務です。重要業務を遂行するための知識技術を持っています。勤務態度を守っています。それを1つのシートにまとめるのです。弊社はこのシートを「成長シート」と名付けました。

 世の中にある「評価シート」とは違います。全ての社員を優秀にするためのシートです。そして、成果の低い社員が一番喜ぶシートです。なぜなら、自分が優秀になるためのプロセスがそこに書いてあるからです。

 この成長シートで社員を評価すると優秀な社員が80点以上、まあまあの社員は60点ぐらいです。これからだという社員は20点かもしれません。全社員の平均点数を出すと50点前後になります。これは、全ての会社に共通します。これが組織原則2:6:2です。

 やがて「成長シート」を活用した結果、全員が80点以上、つまり優秀な社員になります。

「やるべきこと」と「成長のための道筋」を明らかにする

 全社員が上位の2割の社員のように成長した時、全社員が高い成果を上げるようになります。そのとき、会社全体の業績は1.5倍以上になります。

 しばしば、経営者から「この方法による会社の業績向上は1.5倍で終わりですか?」と質問されます。

 実は、これで終わりではないのです。「教えることを最も評価する」と成長シートに可視化することにより、上位の優秀な2割の社員は他の社員に教えるようになり、さらに高い成果を上げるようになります。

 この変化に経営者は驚きます。社内で教え合ったことがないのに「なぜ社員はこのように教え合うようになったのでしょうか! それもあっという間でした」。1カ月もたたずにこれほど教え合うようになったのが不思議でならないようですが、それは、実は社員は教えたかったのです。

 「教えたい」と思っていたからこそ、教えることが評価されると、喜んで教えることができたのです。成果主義を採用して成果だけで評価する会社は、この「教え合う」という組織風土を根こそぎ失ってしまいました。だから会社全体の業績が悪いのです。たったこれだけのことであると気が付くのに、あまりにも時間がかかりすぎています。

 教えることは2度学ぶことです。それを成長シートで可視化し、評価すればよいのです。それによってエンドレスで優秀な社員がさらに成長して業績が上がります。ですから、全社員を優秀にするための指導はとても簡単なのです。

 上司は部下に重要業務を遂行できるように指導すれば良いのです。知識技術を身につけるように指導すれば良いのです。勤務態度を守れるように指導すればいいのです。全ての上司はこの成長シートを使って統一した部下指導をすることができるようになります。

 そのためには「やるべきこと」と「成長のための道筋」を明確にする必要があります。この成長シートで社員のやるべきことを示します。それは、会社のためではなく、社員の成長のためです。このことを多くの会社では、可視化していません。

 成長したくない社員は1人もいません。「成長します」と言って会社に入社したでしょう。その思いを実現するためには優秀な社員を可視化して成長シートをつくることが早道です。それによって全ての社員が手を取り合って一緒に成長していきます。

 会社の業績が一番いいときは、全ての社員が一緒に成長していることを意味します。優秀な社員に期待するだけでは、一部の業績の向上しか望めません。自社にあるその宝を全社員で共有化して会社の業績をますます向上させてください。その宝は自社にあります。

著者プロフィール:松本順市 (マツモトジュンイチ)

ENTOENTO(エントエント)代表。1956年生まれ。中央大学大学院中退後、魚力に入社し、業界初のサービス残業ゼロ、完全週休2日制を実現。93年に独立し、中堅・中小企業を中心に人事制度改革の指導・支援を展開。2021年3月末までに1301社の人事制度を構築した。著書に『社員が成長し業績が向上する人事制度』(日本経営合理化協会)など


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆