若年層に限らず、シニア層以上の社員にはトレードオフや、他責思考から抜け出して大胆にイノベーションに取り組んでほしいが、なかなか変わらない。本格的に「内発的動機付けを中核にしたやる気のサイクルが回る体制づくり」に取り組まなければ、全員が指示待ちの作業員になってしまう……と嘆きの声が聞こえてきます。
内発的動機付けを促す要素について、心理学者で自己決定理論を提唱したデシ氏とリチャード・Mライアン氏は、次の3つを持つことが大切だと述べています。
さらに、これら3つについて、組織と個人のように固有の目的が共有されている関係性において優れたネットワークを築いていることが、よりよい有能感、自律性を育んでいくことを示唆しています。
以上のことからも、「やる気」を高く保つにために欠かせない内発的動機付けは、職場の関係性を高めていくことでもたらされるのだといえそうです。職場から、静かなる退職者を生み出さないためにも、「当社は働きづらい」などというネガティブな文化が形成されないためにも、職場において周囲との関係性を高められるような取り組みが重要です。
関係性を高めるために重要なのが、社員の接触の量と質です。これを私は関係密度と呼んでいます。単純に仲がよいというのではなく、関係性の密度が大切だと考えます。
具体的な内容をまずは、接触の量について説明します。皆さんは次のような経験はないでしょうか?
いずれにしろ、接触は関係性を築くうえで、他人から同士になるためにはなくてはならないものであり、接触の量がゼロで関係性を築くことは難しいものです。その一方で、なんでもかんでも、頻繁に話しかけさえすればよいのかといえば、そうではありません。接触の質も大切です。
これは、実に質の低い接触です。
接触を試みている本人は、よかれと思ってやっているのでしょうが、質の低い接触がいくら重なっても「関係密度」は低くなっていくだけです。ことによっては、ハラスメントとして訴えられる可能性もあります。
質の低い接触の主な特徴としては、次のようなものがあります。
2つを簡単にまとめると、自己中心的な接触です。
休日出勤した人に対して「昨日の休日出勤についての報告書、提出しておいて」と言われるのと「昨日の休日出勤どうだった? 本当に助かったよ、ありがとう。代休はとれそう? 調整するから言ってね。昨日のことは、あとで報告書にまとめて提出しておいてくれると助かるよ」と言われるのでは、受け取り方が違うのではないでしょうか。
このように、相手のことを思って、ほんの少しGIVEするだけで、随分と印象は変わるものです。
目的に合わせて、1つの会話、1つの言葉を付け足すだけでも、相手に、伝わるものが確実に変わっていきます。また、質の高い接触をするためには、次の5つのポイントを頭にいれておくことが大切です。
これらを少し意識するだけで、随分と変わってきます。
詳しくは本書『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』に譲りますが、ほかにも、職場の関係密度を高める方法や、やる気を削ぐ原因を遠ざける方法はいろいろあります。ただ、まず大切なのは、関係性を意識すること、職場風土をよくすることに意識を向けることです。職場風土を改善することで、やる気が出て、成果も出やすく、働く喜びを感じることができる職場環境が生まれるはずです。職場を一層可能性に富んだ場に改善しましょう。
株式会社職場風土づくり 代表 ライフシフト大学 特任講師
1976年生まれ。東海大学中退後、人材サービス会社に勤務したのち、働くことを通じて役に立っていることが実感できる職場風土を創るために起業し、法人設立。年間100の研修や講演に登壇する実務家キャリアコンサルタント。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授