目指すDXは、ユーザー中心のバリューチェーンで価値を提供し続ける企業へ――カシオ計算機 虻川勝彦氏ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(1/2 ページ)

ハード中心のメーカーからソフトで顧客と直接つながり、価値を提供し続ける企業への変革を目指すカシオ計算機。ゼロトラストネットワークの構築やローコード/ノーコードの活用、PLM改革など、同社のDX戦略を紹介する。

» 2023年03月28日 07時06分 公開
[山下竜大ITmedia]

 アイティメディアが主催するライブ配信セミナー「ITmedia DX Summit vol.15 デジタルで技術の空洞化に歯止め」が開催された。基調講演には、カシオ計算機(以下、カシオ)デジタル統轄部 統合プラットフォーム部長の虻川勝彦氏が登場。大手鉄道会社在籍時のシステム部門や経営企画部門の経験、IT戦略策定や各種システム構築、通信事業会社やAI企業の立上げなどのノウハウなどを生かしながら推進する、DX戦略について紹介した。

よいものを創れば選んでもらえる時代の終焉

カシオ計算機 デジタル統轄部 統合プラットフォーム部長 虻川勝彦氏

 カシオでは、「創造 貢献(それまでにない斬新な働きを持った製品を提供することで、社会貢献を実現する)」という企業理念に基づき、モノづくりを推進。カシオといえば、「落としても壊れない丈夫な時計」をコンセプトに、1983年に誕生した腕時計ブランド「G-SHOCK」が思い浮かぶが、1957年に世界初の小型純電気式計算機「14-A」を商品化したことからモノ作りがスタートしている。

 主要製品としては、時計、電子辞書、電卓、電子文具、電子楽器など。

 虻川氏は、「カシオはメーカーなので、これまではよいものを創れば選んでもらえるという考えで、優れた製品を一生懸命に開発してきました。しかし世の中が変化しており、デジタル社会で情報があふれている現在、届けたい情報が埋もれてしまい、お客さまに届かないという状況もあります。優れた製品は作り続けますが、製品を売るだけでなく、優れた体験を提供し続けることに舵を切っています」と話す。

“ユーザー中心のバリューチェーン”の構築がカシオの目指すDX

 これまでのカシオのバリューチェーンでは、開発、生産、営業/マーケティング、販売と続いていたが、販売後にユーザーとの接触があまりなく、カスタマーサクセスの実現やロイヤルティーの向上が難しいという課題があった。今後はカシオとユーザーが直接つながり、ユーザー起点で事業活動が成り立つ“ユーザー中心のバリューチェーン”を構築。それがカシオの目指すDXである。例えばおなじみのG-SHOCKに、自分好みのさまざまなパーツを組み合わせて楽しむ「MY G-SHOCK」もこの取り組みのなかから生まれている。

MY G-SHOCK カシオにおける「機会を創出する体験」

 事業活動のスピードを上げ、新しい働き方を進め、既存ビジネスや業務の生産性を飛躍的に向上させる基盤領域のDXは全社DXの土台になるものである。

変革を実現するための基盤とは

 ユーザー中心のバリューチェーンを構築し、事業活動のスピードを上げ、新しい働き方を進め、既存ビジネスや業務の生産性を飛躍的に向上させるなど、変革を実現するためには、それを支える全社システムやネットワーク基盤など、プラットフォームの構築が欠かせない。

 事業活動のスピードを上げ、新しい働き方を進め、既存ビジネスや業務の生産性を飛躍的に向上させる基盤領域のDXは全社DXの土台になるものである。

ビジネスや業務の生産性を飛躍的に向上させる基盤霊異記のDXは全社DXの土台
  • 事業基盤DX

 カシオでは、ユーザー中心のDXを推進しているが、サプライチェーンのデジタル化により、販売から調達、製造までの計画をデジタルデータで連携すること、調達、製造、物流の状況をデータで可視化することで、生産のリードタイムを短縮する。またスマートファクトリーにより、生産現場において人や作業を見える化し、AIを活用して精度を向上することで、無駄のない高品質な製造を可能にすることを目指している。

 「特に注力しているのがPLM改革です。設計や製造のBOMをつないで、品目別に管理している生産情報を連携し、データを分析、活用できる仕組みを実現します。3D-CADも製造業においてはとても重要な要素で、2次元より3次元データの方がイメージが持ちやすいというだけでなく、設計段階からのシミュレートができるので、生産性の向上や品質向上につながっていきます」(虻川氏)

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