第4回『超訳ドラッカーの言葉』 強み編 成果をあげるために自分の強みを知らなければならない。それは理想の話ではなく厳しい現実である。強みを生かすことは責任である。ドラッカーが教える「成功に必要なもの」(2/2 ページ)

» 2023年08月23日 07時05分 公開
[山下淳一郎ITmedia]
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書いて記憶するタイプ

 音楽家のベートーベンの話です。ある人が彼にこう言いました。「いつも譜面を見ないのに、どうしていつも譜面を書いているのですか。譜面を見ないなら、譜面を書く必要はないじゃないですか。」すると、ベートーベンはこう答えました。「私は譜面に書かないと忘れる。1度書けば頭に入る。書けば覚えるので、書いたあとは譜面を見る必要がない。」彼は「書いて記憶するタイプ」でした。あなたも、自分の得意な仕事のやり方を知り、得意なやり方に徹していきましょう。

聞いて理解するタイプ

 アメリカの第36代大統領、リンドン・ジョンソンは、書面で報告を受けていた頃は、大統領として力を発揮できませんでした。新聞にも酷評されました。彼にとって、書面で報告を受けるやり方は、しっくりきませんでした。その後、自分が得意とするやり方に変えました。口頭で報告をさせるようにしたのです。それ以降、彼は大統領として手腕を発揮し、着実に実績を重ねていきました。彼は「読んで理解するタイプ」ではなく「聞いて理解するタイプ」でした。あなたも得意としないやり方をやめ、自分の得意なやり方で仕事をし、着実に実績を重ねていきましょう。

聞いて記憶するタイプ

 ショパンと言えば、誰もが知るピアニストであり、作曲家です。彼は、今流れている音楽を聴き終えると、その曲を譜面に書き起こすことができたと言います。それは、クラシック分野出身の音楽家の多くができることだと言います。ショパンもそれにもれず「聞いて記憶するタイプ」でした。あなたも、成果を出しやすい仕事のやり方を心掛けていきましょう。

話して理解するタイプ

 中小企業を大企業に育て上げたあるリーダーは、週に1回、経営幹部を集めて2時間一方的にプレゼンをしていました。意見を聞いたり、質問させることはしませんでした。一方的にプレゼンをする目的は、自分の考えを口に出すことによって、自分の考えを理解するためでした。彼のプレゼンは一流でした。迷惑がる者は誰もいませんでした。事実、彼のプレゼンによって、幹部は会社の方向性を深く理解していました。彼は自分が「話して理解するタイプ」であることを自覚していました。成果をあげるために、自分の得意なやり方を生かす工夫をしましょう。

話して記憶するタイプ

 ある会社でマーケティングを担当する副社長は、毎年、経営計画が決まると、全国に13カ所ある拠点に飛んで、プレゼンをしていました。立てた経営計画に向かって、全社員が一丸となって頑張ってもらうためです。毎年、資料と原稿は用意しました。しかし、1回目に訪れる拠点でプレゼンした後は、原稿を確認する必要はありませんでした。彼は、1回しゃべったことは、ほとんどそのまま記憶していました。その副社長は、「話して記憶するタイプ」でした。今日も、自分の得意なやり方で仕事を進めていきましょう。

成果をあげる人とあげない人の違い

 頭がいいから成功し、そうでないから成功しないのか。それは違う。頭がいいから成果をあげ、そうでないから成果があがらないのか。それも違う。では、成果をあげる人とあげない人は、いったい何が違うのだろうか。

ドラッカーはこう言っている。

ゼネラルエレクトリック社の元CEOのジャック・ウェルチは、

いつくかの重要な仕事のうち、自分が得意とする仕事を選んで、

自分が苦手とする仕事は、他の人に任せていました。

成果をあげる人は決まって、

「苦手なことはやらない」「得意なことしかやらない」、

これを徹底しています。

苦手なことで成果をあげられる人なんていません。

大事なことなので、繰り返しお伝えします。

「自分の苦手なこと」を知り、それをやらないようにしましょう。

「自分の得意なこと」を知り、それだけをやるようにしましょう。

『超訳 ドラッカーの言葉』

 あなたらしく、あなたの「強み」を生かし、あなた自身を発揮する、今日もそんなあなたであり続けてほしい。成果をあげることが責任であるならば、強みを生かすことは責任であるからだ。

 以上、今回も知識や方法論ではなく責任という視点で強みを生かす必要性について話をした。次回の第5回は、マネジメントについてお伝えする。

 2023年9月からITmedia エグゼクティブ主催にて『ドラッカーに学ぶ「部下に成果をあげさせる上司5つの実践」』と題して勉強会を開催します。お申込みをお待ちしています。勉強会でお会いしましょう。

ITmedia エグゼクティブ勉強会スケジュールはこちらです。

ドラッカーに学ぶ「部下に成果をあげさせる上司5つの実践」

9月27日(水)18:30〜19:30 第1回上司がしなければならない1つのこと

12月13日(水)18:30〜19:30 第2回上司が果たすべき2つの責任

3月13日(水)18:30〜19:30 第3回上司が継続すべき2つのこと

※案内は開催の1カ月ほど前からメールでお送りしますので、そのメールへの返信でお申込みください。

著者プロフィール:山下淳一郎 ドラッカー専門の経営チームコンサルタント

ドラッカー専門の経営チームコンサルティングファーム トップマネジメント

東京都渋谷区出身。ドラッカーコンサルティング歴約33年。外資系コンサルティング会社勤務時、企業向けにドラッカーを実践する支援を行う。中小企業の役員と上場企業の役員を経て、ドラッカーの理論に基づいた経営チームをつくるコンサルティングを行う、トップマネジメントを設立。現在は上場企業に「経営チームの研修」「経営幹部育成の研修」「後継者育成の研修」を行っている。 

著書に『ドラッカーが教える最強の後継者の育て方』(同友館)、『ドラッカー5つの質問』(あさ出版)、『新版 ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方 』(同友館)、『日本に来たドラッカー 初来日編』(同友館)、『ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方 』(総合法令出版)、『ドラッカーのセミナー』(Kindle)、『ドラッカーが教える最強の事業承継の進め方』(Kindle)がある。主な連載に『ドラッカーに学ぶ成功する経営チームの作り方』(ITmedia エグゼクティブ)がある。ほか多数。


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