男性の更年期障害の支援に取り組む動きが企業に広がってきた。
男性の更年期障害の支援に取り組む動きが企業に広がってきた。女性の更年期障害に比べると認知度は低いが、経済産業省は、男性の更年期障害による欠勤や業務効率の低下などの経済損失が年間1兆2千億円に上るとしている。労働生産性の課題として更年期症状に悩む人が働きやすいように啓発活動や休暇制度の整備に乗り出している。
SMBC日興証券は4月に女性社員向けの生理休暇制度を、男女を問わず更年期症状による体調不良なども対象とする「マイケア休暇」に刷新。休暇取得の上限も従来の毎月1日から連休も可能な毎年度12日に改めた。三菱UFJモルガン・スタンレー証券も更年期に対応する休暇制度を導入、男性からも取得申請が出ているという。
従業員の約9割が男性というホンダは、企業向けのヘルスケア事業を手掛けるクレードル(東京都渋谷区)と契約。約2年前から、同社を通じて更年期障害のオンラインセミナーや、割引で医療機関を受診できるサービスを提供している。
男性の更年期障害は男性ホルモンのテストステロンの分泌の低下で起こる。症状はいらいらや気分の落ち込み、疲れやすいなどさまざまだが、加齢やストレスによる別の不調と区別しにくい。実際、厚生労働省の調査によると男性にも更年期にまつわる不調があることを「よく知っている」と回答した人は40代で10.1%、50代で15.7%にとどまる。
このため、ホンダではメールの社内報やウェブサイトで男性更年期の啓発活動も展開している。
同様に啓発に力を入れている野村ホールディングスは9月、順天堂大医学部付属浦安病院の辻村晃教授が、尾崎由紀子チーフ・ヒューマン・リソーシズ・オフィサー兼健康経営推進責任者と男性更年期について対談する動画を、グループ全社員の必須研修として配信した。
ただ、ホンダの橋本昌一キャリア・多様性推進室室長はこれまでの取り組みに手応えを感じているとする一方、男性の更年期障害は「メタボリックシンドロームなどの健康問題に比べて、すごく言いづらく、恥ずかしいという面がある」と対応の難しさも指摘する。
11月19日は男性の健康と幸福を促す「国際男性デー」。更年期障害を恥ずかしいと思わなくて済むよう、多くの人が理解を深める機会にしたい。
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