DX推進とAI活用による日本の国際競争力強化の鍵はデジタルの徹底活用と産官学連携国際CIO学会 NPO法人化10周年記念講演会(2/2 ページ)

» 2025年05月27日 07時00分 公開
[山下竜大ITmedia]
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 また須藤氏は「DXの中軸をなす生成AI(AX) AI戦略と政策はいかにあるべきか」をテーマに、「日本の企業や大学、官庁は連携が重要です。OpenAIやGoogleのようなLLMを作ることができる企業は日本には多くありません。DeepSeekのようにSLMを重視し、得意分野の小さな言語モデルを連携することで大規模なモデルを作ることができます。SLM連携であれば産官学で実現でき、政府がファンドを用意することもでき、自治体がベンチャーをサポートすることもできます」と話す。

 さらに桑原氏は「未来へのチャレンジ 〜広島をまるごと実証フィールドに!“ひろしまサンドボックス”について〜」をテーマに、「現在、NECに所属していますが、以前は広島県のCIOをしていました。広島では、2008年に3年間で10億円の予算をつけて『ひろしまサンドボックス』を立ち上げ、民間企業や教育機関などの参加者を募り、AIなどの技術を使った地域課題の解決を、自由に考え、提案してもらう産官学の取り組みを推進。現在、開発・実証が153件、協議会会員は約3000者の規模です」と話している。

DX+AX時代の企業、自治体の取り組みでは、DXも、AIも最後は「人」が重要

 続くパネル討論の第2部では、レフトライト国際法律事務所弁護士、国際CIO学会副理事長の水越尚子氏をモデレータに、NTTデータグループ顧問、NTTデータ先端技術社長、NTTデータMSE社長(前NTTデータ副社長)の藤原遠氏、全日本空輸(ANA)執行役員デジタル変革室長グループCIOの加藤恭子氏、全国地域情報化推進協会(APPLIC)理事長の吉田眞人氏の3人のパネリストが「DX+AX時代」をテーマに討論した。

左から、レフトライト国際法律事務所弁護士、国際CIO学会副理事長 水越尚子氏、NTTデータグループ顧問、NTTデータ先端技術社長、NTTデータMSE社長 藤原遠氏、全日本空輸 執行役員デジタル変革室長グループCIO 加藤恭子氏、全国地域情報化推進協会 理事長 吉田眞人氏

 討論にあたり水越氏は、「AIの活用は、民間企業、地方自治体において検討が欠かせないソリューションとなっています。先進的組織では、実践も進んでいます。2部ではパネリストの組織、顧客、支援先におけるAX、DXの現在地について紹介いただき、今後の方向性や取り組むべき課題について討論したいと思います」と進めた。

 藤原氏は「近年のDXの動向とAI活用の現在地」をテーマに、「2024年に企業のDX投資について調査した結果、50%以上の企業が前年よりも投資額を増やし、企業価値の向上に取り組んでいます。一方、AI活用は、2024年度に約70%の企業が投資しています。NTTデータでは、約20万人の社員のうち3万人程度を生成AIが利用できる人材に育成する計画です。ポイントは、IT部門だけでなく、人事、総務、経理、営業など、各職種で必要な生成AIの知識の習得です。DXも、AIも、最後は“人”が重要です」と話す。

 また加藤氏は「ANAが挑むデジタル変革」をテーマに、「連結54社で構成されるANAグループでは、『DXを経営戦略の中心へ』というメッセージに基づき、DXを推進しています。その一環としてお客様接点を26シーンで定義し、お客様体験価値の創出に取り組んでいます。そのためにグループ7000人以上が利用できる生成AIツールを導入し、API連携したグループチャットの活用や議事録/アンケート分析などで月数百時間の工数を削減。今後も『ワクワクで満たされる世界を』実現するDX・AIを推進します」と話す。

 さらに吉田氏は「自治体におけるAX/DXの現状と課題」をテーマに、「自治体のDX推進は、総務省の『自治体DX推進計画』に基づき、各自治体で実施しています。具体的には、住民との接点の多様化・充実化やデータ対応の徹底などで窓口業務を改善する「フロントヤード改革」、基幹業務システムの標準化・共通化による「バックヤード改革」です。自治体のAI導入は、都道府県の半分程度、市区町村の約40%で活用されています。生成AIは導入済みが194団体で、実証中が302団体、未導入が1292団体です」と話す。

 最後に水越氏は、「パネル討論の第2部では、DX+AX時代における企業、および地方自治体の実践的な事例から課題を解決するためのプログラムやフレームワークの作成、今後の展望まで、非常に有意義なディスカッションができたと思っています。」と話し講演会を終了した。

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