豊田合成 福村氏の管制塔システムの説明を受け、NTT DATA Inc.のVilardaga氏は、同システムの構想から実装までをNTTデータが支援したことを明かしたうえで、さらに発展させた事例として、同社が支援する欧州 自動車OEMの取り組みを紹介した。
この企業では、調達部署をサポートする「インバウンド・タスクマネジャー」と呼ばれるシステムを構築している。同システムでは、製造ラインのカバレッジ状況や今後の生産オーダー、供給元の在庫や納品状況などをリアルタイムでモニタリングし、部品の発注タイミングや優先順位をAIエージェントが判断している。
さらに特徴的なのは、クライアントとの契約条件や納期ペナルティの有無、メールやチャットの文脈までを理解したうえで、タスクに優先度を付け、現場の担当者をアサインする機能を搭載している。例えば、電子部品を扱う失敗の許されないタスクがあれば、過去に電子部品の経験がある調達担当者が割り振るといった具合だ。
このシステムでは、人手で情報収集・判断していた業務を、AIが支える“デジタル指令系”へと転換している。ただし、AIの役割は、あくまで担当者のサポートにある。「人を中心に据えた変革こそが、テクノロジー導入成功の鍵だ」とVilardaga氏は語気を強める。
同社では、こうしたシステム構築に際して、製造工程およびサプライチェーンにおける全てのプロセスを精査し、「どのように人をサポートできるか」そのためには「どの段階でシステムを活用するべきか」などを検討したうえで、まずは特定プロセスに対象を絞って価値検証(PoV)を実施するスモールスタートのアプローチをとっている。
「こうした取り組みは、単なる技術の導入ではなく、現場の役割や従業員のスキルなど、人の変革を伴うものであることから段階的な導入が大事だ」(Vilardaga氏)
では、今後、製造業はどのように変わっていくのか。
GPIのNarvekar氏は、毎週のように新しい大規模言語モデル(LLM)が登場する現状に触れたうえで、こうした技術を活用して「人の関与を最小化し、自律的な対応が可能な体制」を目指していると明かした。
例えば、同社では、現在もセンサーデータを基に機械の故障予兆を検出しているが、今後はAIエージェントの力を借りて自動的に保守を実行するような仕組みを想定している。
「トラブルを完全に防ぐのは難しいが、重要なのは、人の介入を減らして復旧を迅速化することだ」とNarvekar氏は述べ、目指すのは“ダウンタイムゼロ”の世界であると改めて説明した。
急激なAIの進化を踏まえると、今すでに、事業のかたちを考え直すべきタイミングにあることは間違いない。環境がますます不安定になる中で、何を中心においてどう設計するべきか。こうした事例を参考に検討してほしい。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授