会議を減らすべく取り入れたアドホック型コミュニケーションだが、実は、この方式はそもそも会議が少なくなければ成立しないという。
一般的な組織では、「ちょっと相談したいことがあるが、1日中会議が入っていて声をかける隙がない」というシーンに直面することも珍しくない。結果として、些細な相談でも予定を抑えることになり、スケジュールがさらに埋まっていくという悪循環が発生する。
これを変えるには、各人のスケジュールにある程度の空き時間を作らなければならない。関係者に空き時間があれば、即座に相談することができ、30分、60分の枠抑えがなくなるので手短に終えられる。同社では、対面の打ち合わせも15分以内で終了することが多いという。
また、GenerativeXでは、意思決定後の作業を生成AIで最大限自動化している。Slackなどで交わすデジタルなメッセージに限らず、口頭のやり取りに関してもリアルタイムで記録・要約し、関連タスクに自動変換する仕組みが整備されている。さらに開発案件では、仕様の記録からコードの自動生成、テストまでを一気通貫で進めることも可能だ。
「人間が決めるのは“何をやるか”だけ。その後の段取りや準備はAIが自動でやる」と荒木氏。社員は意思決定や付加価値の高い作業に集中できるうえ、時間の余裕が生まれてコミュニケーションも捗る。プロジェクトとしては、決定から実行までのタイムラグを極小化でき、ビジネスのスピードアップにつながる。
もう一つ、会議削減の要因となっているのが、生成AIを活用して課題や疑問を自身で解決する文化である。
同社では、「まずAIに聞け」という指導が徹底されている。一般的な技術や概念に関わるものであれば、汎用的な生成AIで大抵のことは解決する。質問の際には恥や忖度を挟まずに済むので、ベテランに教えてもらうよりも早く答えにたどり着く。
社内の情報に関しては、各種データソースを検索・要約する生成AIツールが用意されており、Slackから呼び出して使用できる。前述のとおり、会議の内容は、自動的に文字起こし・要約され、タスクが明文化されている。録画データも含めて、全ての情報が社内でリアルタイムに可視化されるので、だれでも過去の経緯や判断理由を容易に探れる。
このような環境があるため、社員が社内向けにドキュメントを作るケースはほとんどない。「そんな暇があれば、顧客向けの活動に時間を使う」(荒木氏)というのが同社の方針だ。
顧客価値を最大化するための最短経路は何か。模索した結果が「まずはAIに聞け」という文化だろう。
会議は本来、意思決定や情報共有のための手段にすぎない。しかし、多くの企業ではその形骸化が進み、目的と手段が逆転してしまっている。GenerativeXの取り組みは、「会議ありき」から「意思決定ありき」への発想転換を促すものだ。
「社内会議がない会社なんて考えられない」というのが多くの方の率直な意見だろうが、同社のようにゼロに近づけることは不可能ではない。そこを変えることで良い循環が生まれ、職場改善やビジネスのスピードアップにつながる。
生成AIという革新的な技術の到来は、組織運営の在り方を根本から問い直す良い機会ではないだろうか。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授