マスタの整理はデータガバナンスグループだけで実現できる仕組みではないことから、「コードガバナンス検討ワーキンググループ」を立ち上げ、財務、人事、営業、調達、および情報システムの担当者が参加し、月1回ミーティングを開催して進めている。
「ただし理想(To Be)だけを語っても簡単にはマスタは修正できないので、これだけはやらない(Don't)ということを明確にして、優先度をつけて実施しています。この取り組みにより、次に開発するシステムはコード体系を統一することができます。今後も無理せず、止まらないスピード感でマスタ共有を発展させ、マスタデータ管理(MDM)を実現していきたいと思っています」(大山氏)
「データレイクのような全社共通の仕組み作りを進めると、だれかが作ってくれるという他力本願になりがちで、リスキリングやデータ利活用のためのツールの学習、データやシステムの理解、AIの勉強などをやらなくてもよいと思われてしまう懸念があります。われわれデータガバナンスグループがデータレイクで実現するのは、ユーザーの共通の課題を踏まえ、最大公約数的に開発する仕組みです。これにより、部門共通の業務の非効率を減らし、共通化した運用業務も最小限に抑えられます。その分の時間で、部署特有の課題や更なるデータ活用を皆さんで考えてくださいという役割分担が良いと考えています」と大山氏は話す。
データ利活用を自分ごととするためには、一人ひとりの社員が自分たちのデータを理解して、どうすれば何ができるかを考えることが必要だ。そこでデータガバナンスグループが、データレイクの課題を解決してきたノウハウを、毎週火曜日、木曜日の朝15分でシェアし、悩み相談にも応じる「朝イチデータ相談」を実施している。火曜日はデータレイクを通じて得たノウハウを共有する。木曜日は参加者が実現した仕組みを紹介したり、課題に対して回答してくれる有識者を探したりという時間にしている。完全な自由参加だが、毎回平均10人程度が参加し、コミュニティとしては70人規模に育っている。
大山氏は、「朝イチデータ相談で共有された課題を参考にして、データレイクの次なる発展につながり、データレイクのさらなる活用につながるという良いサイクルが生まれています。ノウハウの共有化は、自分たちだけで解決できる課題を増やす効果も生んでいます。社員は単体でも4800人いるため、70人ではまだまだ規模が小さいですが、草の根でデータに詳しい顔見知りをつくりながら、データ人材をじわじわと増やしていくアプローチをこれからも進めていきます。社内の様々な部署で孤軍奮闘している社員をつなぎ、応援できていると感じています」と話す。
現在は桶川工場の情報システム全般を担当している安田氏も工場にいると全社が見えにくいと話す。
「データレイクの取り組みやデータガバナンスがより一層進んでいくと会社のデータを見ていこう、活用していこうという文化につながると思います。特定の部門だけでなく、全社を見て事業計画を立てるなどにつながるのではないかと思います。桶川工場にもデータに詳しい人材が多くいます。仲間を増やしてデータ活用を推進し、ほかの工場にも同じ取り組みを横展開していければと考えています」(安田氏)
もとよりデータは目的ではなく手段だ。その手段を使って何をするかは社員一人ひとりに委ねられている。
「素材産業はさまざまな企業とつながりながら広く社会に貢献していくのですが、会社の規模が大きくなると自分たちの会社なのに手触り感がなくなってきてしまいます。良質なデータを活用することで、自分の会社がどういう会社でどういう状態なのか、市場はどういった状況なのかをより一層認識できるようになります。こうした取り組みの積み重ねで、自分が働いている環境や自分が向き合っているお客様をより理解して、価値提供がしやすくなっていくはずです。プロテリアルは、“質の量産”をミッションに掲げていますが、データ活用で視野が広がりと洞察が深まれば、競争力が高まり、世の中にその価値を広く還元できると信じています」と大山氏は意気込みを語る。
草の根で変革を進めるプロテリアルの今後の活動に注目していきたい。
Windows 3.0が米国で発表された1990年、大手書店系出版社を経てソフトバンクに入社、「PCWEEK日本版」の創刊に携わり、1996年に同誌編集長に就任する。2000年からはグループのオンラインメディア企業であるソフトバンク・ジーディネット(現在のアイティメディア)に移り、エンタープライズ分野の編集長を務める。2007年には経営層向けの情報共有コミュニティーとして「ITmedia エグゼクティブ」を立ち上げ、編集長に就く。現在はITmedia エゼクティブのプロデューサーを務める。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授