第45回:ほとんどの営業リーダーが“戦略の立て方”を勘違いしている 伸びる企業・伸びない企業の明暗を分ける戦略展開・組織作りのポイントは:マネジメント力を科学する(2/2 ページ)
企業の指標として、「経常利益○%」「増収増益」といった数字が取り上げられることが多いが、「自社は何を為すべきか」「社会にどう貢献するか」が伴わなければ本末転倒ではないだろうか。
OODA導入の前提と“売り物化”への注意
前提として、部長の“思い”と課長の“思い”を統合し、方向性が共有されていることが重要です。そこが固まっていれば、変化対応に強いOODAは有効です(思いが不明確ならPDCAよりOODAが先行しても機能しません)。
なお、フレームワークを“売るためにOODAを推す”風潮には注意が必要だと北澤さんは釘を刺します。コンサルタントの質が玉石混交になった現実も、現場にはあります。
「経路依存性」と全体の“しがらみ”
昨今よく耳にする経路依存性についても、北澤さんはこう整理します。
1つを変えても全体に波及しにくい“しがらみ”が組織に張り巡らされています。役員が役割を明確化し、営業部長に外部統合を担わせ、営業課長が3要素を回せるようにする──この全体設計を同時に進めなければ機能しません。
表面上の業績だけで良し悪しを判断せず、課長がマネジメント・リーダーシップ・育成を実践し、その結果として組織がどう変わったかを、営業部長がしっかり観る責務があります。
これからの営業組織の定義を変える
最後に、これからのあるべき営業組織像についてです。北澤さんは、営業は“業を営む”ことであり、社員全員の仕事だと再定義します。
顧客接点に全員が向かい、営業は各部署の“先頭打者”として前線に立ちます。分業で「作る人/売る人」に分かれるのは高度経済成長期の考え方です。売上目標を営業部だけに負わせるのは大間違いであり、製造やマーケティングも含めた全社で価値創造に向かうべきだ、と。
ここで私が懸念として挙げたのは、事業部長―営業部長―営業部―隣にマーケや製造という体制の会社で、営業部長が外部統合に踏み出した際、「領空侵犯だ」と反発する事業部長が出るのではないかという点です。
これに対する北澤さんの答えは明快でした。「それはダメな事業部長です。世の中の変化が分かっていません」。
営業が前線で価値をつくる時代認識を共有できるかどうかが、まさに分かれ道なのだと思います。
著者プロフィール:井上和幸
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
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