連載第1回では、Webマーケティングを進める上で壁となる組織の課題などについて述べました。今回は、Webマーケティングの現在に焦点を当て、その潮流を追います。
現在、日本のWebマーケティングで起こっていることは、実は1990年代に米国で論議され実践されてきたこととそれほど変わっていません。その一部は、日本企業の中で特に先進的な企業が米国のパッケージベンダーの助けを借りて実践に移していました。こう言うと、この10年間で進歩がないように思われるかもしれませんが、それほどまでに実践に移すにはハードルが高かったというだけの話です。
1990年後半、西のシリコンバレーも東のシリコンアレー(当時は、NYのSOHO地区でインターネット企業が集積した地域をこう呼んでいました)もインターネットに沸いていました。シリコンバレーでハイテク関連のコンサルティング会社をやっていたわたしのところにも、コミュニティーやSNS(当時はSNSという名前はついていませんでしたが)、オークションなどの事業モデルのほかに、リコメンデーションエンジンやeCRMなど法人のマーケティング支援に関するさまざまなソフトウェアが持ち込まれました。なぜ、当時開発されたものが、日の目を見ず、今になって実践されているのでしょうか。それほど難しい理由はありません。
1. 市場規模が小さく、企業が利益や十分なリターンを得ることができなかった
2. インフラストラクチャがまだぜい弱で、ユーザーの利便性が低かった(特に、帯域が狭く、インターネットのスピードが遅かった)
3. 先進的ゆえに、スケールメリットもなく、共有できる技術も少なかった。開発会社の開発コストが高く、それがソフトウェアの価格にそのまま反映された
4. ベンチャー企業(米国ではスタートアップという)の経営基盤がぜい弱で、ハイテクバブルの崩壊により、ほとんどのソフトウェアベンダーがつぶれてしまった
以上のような理由が挙げられます。
現に、インターネットのマーケティングプラットフォームを提供しているGoogleを見てください。Googleでさえ……という状況です。同社が抱える世界の広告主の数は現在、数十万社ですが、その設立は1998年に戻ります。
ようやく日本でこれらのマーケティング手法が実践に移されているのは、上の理由のミラーイメージに過ぎません。市場はリターンを得るために十分に成熟しました。インフラストラクチャは、ユーザーがインターネットを使いこなすほどに便利になりました。開発コストは激減しています。例えば、ネットイヤーグループが設立当時に開発したマーケティングのためのシミュレーションソフトなども、今ではその10分の1の価格でできるようになっています。
また、当時バブルの崩壊でつぶれていった米国企業が提供していた高価格のパッケージソフトウェアと同様のソリューションを提供する会社が日本にも現れ、利益を出しながら成長しているのです。そのソリューションは、当時の価格とは比べ物にならないほど安価です。今では日本の企業の中にも、かなり進んだWebマーケティングを実践する企業が増えているのです。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授