世界の携帯電話がつながる理由は福島県にありものづくりニッポンの最前線(1/3 ページ)

日本のものづくりへのこだわりが世界の携帯電話インフラを支えている。福島県のNECワイヤレスネットワークを訪問し、品質向上を追求し続ける開発・製造の現場を垣間見た。

» 2008年01月21日 07時15分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 「ものづくり大国・ニッポン」――日本が国際競争を勝ち抜くためのフレーズとして、この言葉は長年語られ続けてきた。しかし、世界の最先端技術が集積する現場を直接見ることは難しい。NECグループ内で無線伝送システムなどの開発・製造を手掛けるNECワイヤレスネットワークス(福島市)を訪問し、超小型マイクロ波通信システム「Pasolink」の製造・開発の現場で、品質と顧客満足度の向上を追求する姿を垣間見た。

 NECワイヤレスネットワークスは1973年に設立され、主な事業内容は、無線および固定系通信の制御システムと、工場設備機器の管理などに使われるコンピュータの開発および製造。JR福島駅から南西に車で20分ほどの高台にあり、周辺は森林に囲まれている。

超小型マイクロ波通信システム「Pasolink」。アンテナの鉄塔などに取り付けられている

 同社の主力製品の1つであるPasolinkは、企業のデータ専用網や固定基幹網における無線伝送区間用設備として利用されてきたが、現在では離れた場所にある携帯電話基地局同士の通信用途が8割以上を占める。1980年代前半から開発・製造が始まり、現在では世界131カ国で約700の企業や法人が利用する。

 累計出荷台数は2007年9月末現在で約70万台、マイクロ波通信システム市場では世界シェアが31.2%で第1位(米Sky Light Reserch調べ)となっている。近年は、インドや東南アジア、東欧、アフリカ、南米など、携帯電話市場がハイペースで拡大している地域の携帯電話事業者からの受注が増え、2007年度は前年比1.5倍の伸びをみせているという。

多品種・受注生産・短納期

 出荷されるPasolinkは、基本的には1台ごとに異なる仕様だ。国や事業者ごとに使用される周波数帯が異なり、設置される場所によって運用に必要な出力や伝送容量などもまったく異なる。水村元夫社長によれば、装置の組み合わせパターンは1000種類以上になり、言語対応も含めると、さらに種類が増えるという。

水村氏

 受注から納入までのリードタイムは平均で2〜4週間程度だが、緊急性の高い注文の場合は、10日〜2週間で対応する場合もある。他社のリードタイムは平均4週間前後だという。当面は、すべての注文に対して2週間以内に納入できる体制を目指している。「Pasolinkが評価を得ているのは、高い品質とコストパフォーマンスを維持しつつ、受注生産でも短納期を実現している点にある」と水村社長は話す。

 こうしたニーズは、ワイヤレス機器に限らずどのような製品にも求められるものだ。だが、コンシューマー製品のような大量生産を伴わず、受注変動の予測が困難な業務用製品において、このようなニーズを満たすのは容易なことではない。

 水村社長は、ものづくりの最前線である生産ラインの自律的な改善、ラインのオートメーション化、販売・開発・生産の連携強化、サプライチェーンマネジメント(SCM)の徹底が、これらのニーズを満たす原動力になっていると説明する。

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