グローバルに事業を展開する企業ほど、環境問題に対して負う責務は大きい。ホンダでは「グリーンIT」に関する取り組みをスタートしている。
2007年における生産台数は、二輪車と四輪者でそれぞれ1356万台と390万台。そのうち前者で97%を、後者で66%を海外生産する本田技研工業(ホンダ)――。地球温暖化や環境問題への対策がCSR(企業の社会的責任)の点からも重要になる中、グローバルに事業を展開する同社は世界規模で責任を問われている。
1月18日、東京エレクトロン デバイスが開催したセミナーで、本田技研工業IT部第二システム室室長情報システム主幹の新井典之氏は、ホンダの環境対策の取り組みを説明。環境対策においてIT部門が果たせる役割は“意外に”広いようだ。
ホンダは環境問題にいち早く取り組んできた企業の1つだ。2000年には、(1)二輪車と四輪車の新車の排ガス(NC、NCx)総排出量を1995年比で約7割削減すること、(2)製品生産の省エネルギー化を進め、エネルギー効率を表す値である「エネルギー消費原単位」を1990年比で15%低減させること――の2つを柱とした目標を掲げ、2005年までにすべて達成してきた。続く2006年2月には、2010年度のCO2低減目標を発表し、現在、製品の生産時や使用時のCO2の削減に取り組んでいるところだ。
「事業をグローバルに拡大してきたことで、環境に対する社会的責任も大きくなってきた。環境に配慮したCSR経営を行うことが、これまで育んできた当社のブランド価値を損なわないために不可欠だ」(新井氏)
目標達成に向け、同社は各種の施策を進めている。製品面ではインスパイアなどの車種に、走行状況によって燃焼気筒数を切り替え、CO2の排出量を抑えることができる「可変シリンダー」を採用。ハイブリッドカーについてもラインアップの拡充に力を入れているほか、今年中には燃料電池車「FCXクラリティ」のリース販売も開始する計画だ。
「自動車やバイクに加え、2010年から販売を開始する小型ジェット機は一般的な従来機よりも燃費を約4割も向上させた。360億円と高額ながら2006年10月の発表当日に100台も注文があったことから、エネルギーに対する消費者の関心が高いことは明らかだ」(新井氏)
2010年度のCO2低減目標を達成に向けて、ホンダのIT部門では「グリーンIT」の取り組みをスタートさせている。一般に「グリーンIT」は、IT機器自体の省電力化とIT活用を通じた効率改善によって、環境負荷を軽減しようとする取り組みと定義できる。
「海外事業の急成長で、IT消費電力は増えつづけている。ITの集約により電力消費を削減できる」と新井氏。
2002年からCO2低減策の一環として、関係会社を含めたITインフラの集約に着手。5台あったメインフレームを2004年には2台にまで削減、省電力化とともに運用コストを22億円引き下げることに成功した。仮想化技術によるサーバの集約も進めており、複数のアプリケーションを統合したシステムの稼働も「もうすぐ」の段階まできているという。
また、同社のあるセンターでは省電力のインテリジェントスイッチに切り替えることで、データセンター内のネットワーク消費電力を半減させたともいう。
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