日本企業のITインフラは無計画に広がってきた。IT調査会社ITR代表取締役の内山悟志氏はこの状態に危険信号を発する。あたかも無理につくった首都高速そのものの様相をていしているという。
IT調査会社アイ・ティー・アール(ITR)代表取締役の内山悟志氏は多くの企業のIT戦略をコンサルティングの立場からサポートしている。その中で、危惧しているのがITインフラだ。無計画なITインフラが野放しになっているだけでなく、いまだに拡大を続けているからだ。
「これまでは、このようなITでも何とかビジネスに追従できたかもしれない。しかし今は、M&Aや分社化、業務提携などがグローバルな規模でダイナミックに行われる時代。ITインフラがそんな状態ではビジネスの速度に適応できない。この状態はオリンピックに間に合わせるために、無理につくった首都高速と同じ。将来に向けた計画性がない」と内山氏。
行き当たりばったりで“継ぎはぎ”的に追加されてきた企業のITインフラはそろそろ限界に近づきある。経産省がEA(エンタープライズ・アーキテクチャ)についてまとめ、Webサイトで公表しているのもそのためだ。
内山氏は「ITインフラの問題を解決できるのは、今がラストチャンス」と強調する。
そもそも日本企業のITインフラが継ぎはぎ状態になったのには理由がある。1990年代にホストからオープン化に企業は取り組み始めたものの、固定費的なITはバブル崩壊の煽りをもろに受け、IT投資は予算カットの矛先となった。インフラのグランドデザインを見直す機会を得ることなく、オープン化によって次々とアプリケーションが投入され、それに伴ってインフラも拡張されてきた。
「アプリケーションの業務要件というのは経営者も分かりやすい。だから業務アプリケーションには投資する。インフラはそれに付随するものとしかとらえられなかった」。結果、ITインフラはアプリケーションが増えるままに無計画に構築され、気が付くと重い負担になった。
「背負うだけで精いっぱいというところまできてしまった」と、内山氏は危惧する。
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明治学院大学 経済学部准教授