ミドル層の衰退が叫ばれて久しい。「名ばかり管理職」など役職そのものを軽視するような言葉も登場している。果たして、ミドルの復権はあり得るのか? 新連載「ミドルが経営を変える」は、『部長の経営学』などの著書で知られる若手論客、吉村典久氏が企業経営におけるミドルのあり方に迫る。
「モノ申す」。経営トップに対して。
読者に「モノ申すのは誰か」と問えば、株主総会が近づいた時期ならずとも「株主、特に欧米の機関投資家」と即答、あるいは「昔、総会屋。今、年金基金」との返答もあるかもしれない。
しかし一方で、カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)をはじめとする有力な年金基金や運用会社が2008年5月に公表した『日本のコーポレート・ガバナンス白書』では、独立性の高い社外取締役の重要性を説くなど、日本企業の経営トップに「モノ申す」との旗幟(きし)を鮮明にしている。
ここまで目を通して、連載テーマにそぐわない書き出しだとの感をもった読者も少なくないだろう。「ミドルが経営を変える」と題されていれば、その内容は「はじめての課長の……」「上司の……」といったベストセラーに類似したものを先読みしていた読者が大半だったかもしれない。「モノ申すと書かれても」との声もあるだろう。
しかし(経営トップに対して)「モノ申す」は、当連載の最も重要なキーワードである。なぜなら、モノ申すのは誰かと問われたとき、株主ではなく、従業員、特に部長や課長などの「ミドル」がモノ申すべきだという議論を展開したいと考えているためである。具体的に言えば、企業経営を良き方向に主導し得る経営トップの任命(あるいは、主導できないトップの罷免)にミドルが公にかかわっていくべきだと主張していきたい。
41.2万人、92.4万人、そして83.5万人。計217.1万人。これは、日本企業(常用労働者100人以上)で働く、部長、課長、そして係長の数を示すものだ(財団法人労務行政研究所調べ)。経営トップと一般従業員の中間にある人々、いわゆる中間管理職あるいはミドルマネジャーと呼ばれる人たちは、必要とあらば経営トップにモノ申すべきであり、彼らにはそれに値する能力とインセンティブが備わっている。より良い企業経営を実現するために、200万人を優に超えるミドルが果たすべきこうした新たな役割について述べていこうとするのが当連載の主旨である。
企業経営のなかでミドルが果たしてきた役割、果たすべき役割については、これまで数多くの議論が展開されてきた。
当連載では、そうした議論とは一線を画す議論を展開していきたいと考えている。既存のオーソドックスな議論についての解説は必要最低限にとどめるつもりである。現在の企業経営を取り巻く環境を見つめたときに、ミドルが考えねばならない、果たさねばならない役割のみフォーカスしていく。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授