「教育機関も競争力の強化を」――青山学院の情報システムをマイクロソフトが構築Dynamics初導入の教育機関

マイクロソフトは、青山学院の幼稚園から大学院までの在校生と職員、卒業生、保護者をつなぐネットワークシステムを構築する。ログイン認証の一元化やメールサービスのホスティング提供、アプリケーションの仮想化で学内システムを強化し、学院の経営力やブランドの強化を目指す。

» 2008年12月02日 08時00分 公開
[杉浦知子,ITmedia]

 青山学院とマイクロソフトは12月1日、ICT(情報通信技術)ネットワークの構築を共同して実施すると発表した。青山学院の幼稚園、初等部、中等部、高等部、女子短期大学、大学、大学院の職員や在校生、保護者、卒業生、計15万人のアカウント管理を統一して情報を一元管理するシステムを構築する。利便性を向上させるだけでなく、管理運用の負荷を軽減し、運用コストの70%削減を目指す。

 青山学院の松澤建理事長はネットワーク構築の目的を「経営基盤を強化し、国際競争力のある人材を育成するため」と話す。同学は学術の交流や連携によって、海外の大学や教育機関との交流を促進する国際的な教育研究ネットワークの構築を計画し、2009年にネットワークの更新を予定している。今回の取り組みは「その計画の中で大きな役割を果たすもの」と松澤理事長は位置付ける。

 今回の取り組みでは、学校ごとに個別にドメインを発行して管理してきた在校生のアカウントを「Microsoft Active Directory」に一元化することで、アカウント管理の煩雑さを解消する。従来はメールシステムや学生情報サービスへログインする際、アプリケーションごとに認証が必要だった。利用者は、PCへのログイン認証だけでメールシステムなどのアプリケーションにアクセスできるようになる。

 在校生や卒業生の情報を管理するため、企業向けの顧客管理システム「Microsoft Dynamics CRM」を教育機関として初めて導入する。2009年6月より卒業生の組織向けのシステムとして利用を開始し、同窓会の管理や連絡などに利用していく。順次、幼稚園から大学院の在校生まで利用を拡大し、入学時からのすべてのデータを個別に集積し一元管理する。過去の情報を生かした学習指導計画を策定することにより、在校生の学力向上を期待している。

 職員や在校生、卒業生などのコミュニケーションを活性化するため、教育機関向けコミュニケーションツール「Microsoft Live@edu with Exchange Labs」も2009年4月に導入する。Exchange Serverが提供するメールやスケジュール、アドレス帳、Windows Liveメッセンジャーといった機能を利用できる。教職員と大学の在校生の計3万人から提供を開始し、幼稚園から大学院の在校生、保護者、卒業生へ利用者を拡大し、2009年夏までに15万人の利用を見込んでいる。保護者や卒業生へもアカウントを付与することで、校外にいる関係者との連携を密にしていく狙いがある。保護者へは、Dynamics CRMで管理する学生の履修状況や出席状況、成績をリアルタイムに開示できるようになる。

 青山学院の大学と女子短期大学のシステム約3000台に、アプリケーション仮想化技術「Microsoft Application Virtualization」を導入する。1台のPCで38の言語、複数バージョンのアプリケーションを利用できるようになる。留学生にPC利用を促し、海外の学生との交流を活性化する狙いがある。Active Directoryによるドメイン統合の完了後、初等部、中等部、高等部でも展開していく予定。

 システムの構築以外に、青山学院大学での知的財産総合概論講座にマイクロソフトから講師を派遣したり、青山学院でマイクロソフトが講演をしたりといった、相互の人材交流も深めるとしている。

マイクロソフトの樋口泰行社長と青山学院の松澤建理事長 樋口泰行社長(左)と松澤建理事長

 マイクロソフトの樋口泰行社長は「経済的に厳しい状況の中、教育機関でも競争力や経営力の強化が求められている」と述べ、今回の提携で青山学院の経営力やブランドの強化という目的を達成するため技術支援をするとした。民間企業を中心にビジネスとして活用するCRMやアプリケーションの仮想化技術を教育機関で導入することに対して、「青山学院での導入をきっかけに、これから教育機関においても民間企業で有効利用されているシステムが一般的になっていくのではないか」と期待を述べた。

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