企業にはびこるIT幻想論。ITを導入すれば業務効率が向上し新たなビジネスチャンスが生まれる。それほど事は簡単にいかない。そこで2009年は「アンチIT」を勧めたい。3つのポイントを紹介する。
ITに頼らざるを得ない企業活動にしたのは誰か? そもそも「本当に企業活動にITは必須なのか」という世間で言われている前提を疑ってみることを真剣に考える時期が2009年である。さらに「ITで情報共有し有効活用できる、新たなビジネスチャンスが生まれる」という「IT幻想論」を正す時期にもなるだろう。
IT活用の有用性を可視化=見える化(誰がこんな言い方をしたのか分からないが、ITがいかに現実感、有難さが実感できないということを露呈しているだけのこと)する、という響きのいい評判に惑わされてはいけない。「ITで経営はよくなっているの? 売上は伸びているの? 無駄なお金は使っていないの?」なんていう当たり前の効果を数値化するに過ぎない。
しかしITが便利で、優れたツールであることは否定しない。誤解があるとすれば、特に多くのITを上手く使いこなせない企業やヒトがITの現実の役割に気付かなければならない。企業のビジネスコアをどれだけ磨くか、差別化できるかということを常に優先して考えなくては本末転倒になってしまう。企業はその企業たりえる商品やサービスというコアを展開することなしには、今後は市場競争を乗り切ることが極めて困難な時代になるだろう。
またITに関する各種資格や認定制度、リテラシーを伝授することに長けた企業やヒトが実に多くいる(多過ぎる)。もちろん、それが彼らのビジネスとしての存在価値はある。しかし多くのIT関連有資格者や販売店、ベンダー、お役所などからのご託宣により、中堅・中小企業が経営課題を解決するためにITを有効に活用できているとはとても言えない状態だ。いくらITリテラシーを磨いたとしても、経営に役立つ使い方ができなければ意味がない。
よい兆候もある。実はSaaS(XaaS=PaaS、IaaS、DaaSなど)を代表とする新たな要素技術は、Web2.0時代の、ある意味大きな革命を引き起こす機会をもたらすことになるだろう。SaaSなどのサービス化や外部へのソーシング、つまり「利用する」という傾向は否応なしに強まることは確実だ。ただクラウドや仮想化、グリーンIT(リソースの有効活用などを含む)も利用する環境を変化させるだけのことなので、そのものが企業の課題解決を導き出すものではない。
SaaSやクラウドはあくまでITの実現手段の一つであり、それそのものがコアビジネスを保証するものではない。しかし、IT活用のための費用的、時間的コストを大きく引き下げる効果があり、ユーザが効果的なIT活用のために試行錯誤する機会が与えられるという意味ではよい兆候である。
かたや情報システム部門は、その存在意義が問われている状況だ。単にITのお守りをするだけの部門ではなく、事業戦略とコモディティ化されたITを結び付ける役割こそが情シス部門の求められる姿である。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授