厳しい経済状況にありながらも、しっかりと現実を見据え業績回復に取り組むリーダーと、根拠なく「大丈夫だ」と楽観視するリーダーがいる。その企業がどうなるか。結果は火を見るより明らかだ。
株価がバブル崩壊後の最安値を記録するなど、経済状況は混迷を極めている。中でも、自動車メーカーの落ち込みは世界的にみても、とても厳しい。ただ、そのような状況でも努力を続けている企業に少しずつ明るい兆しが見え始めている。在庫調整が進み、増産に踏み切ったり、減産幅を縮小することを表明したりする企業が出てきている。
トヨタ自動車は、今年5月の国内生産台数を2〜4月の月平均台数より約3割多い20万台規模に引き上げる予定である。これが実現できる理由は、トヨタが世界の車販売の縮小幅を大きく上回る減産を続けているからである。大幅減産を継続すると、5月以降は販売が上向かなくても車種によって品薄になる可能性があると予測し、生産水準を上げることを決めたのだ。日産自動車は、今年 1月に前年同月比6割、2月に同7割強の減産を実施しており、在庫調整が進展していると判断し、3月の減産幅を5割前後に圧縮することを決めた。2月と比較すると、生産台数が2倍近くに増える見通しである。そのほか、ホンダが4月から稼働休止日を現在の5日から2日に短縮し、三菱自動車も4月から6月の減産幅を縮小することを表明している。
これらの企業の動向は素材メーカーにも好影響を与える。まだまだ水準は低く、世界経済の行方次第では達成が難しくなることもあるが、厳しい現実に目を背けずに、戦っているからこそ、なせる業である。ここから学べることは、現実を直視し、現実をより厳しく受け止め、どのように対処するかを考えて、対策を講じていくことが大切だということである。
一方で、厳しい現状を目の当たりにしても、それを直視するのを避け、根拠のない自信から「大丈夫だろう」と楽観視する人がいる。いくつかの根拠に基づいて、ポジティブに物事をとらえる能力はリーダーとして必要であるが、なんとなく「大丈夫だろう」と思い込み、何も対策を講じないのは、現実から逃げているに過ぎない。特に現在のような未曾有の経済危機においては、たった1つの判断の遅れが、企業に致命的な事態に陥れる引き金になってしまうこともある。リーダー自身がその引き金をひくようなことが決してないよう、リーダーには恐れずに現実を直視してほしい。
わたしはコーチという立場で多くの企業で研修をしているが、現実を直視する力は、女性のほうが長けていると感じる。男性はとかく大きな夢を見がちであり、将来にばかり目を向ける。もちろん女性も将来のことを考えるが、現実を冷静に受け止め、その現実が例え厳しいものであったとしても、悲観も楽観もせずに、自分がどのように対処すればよいかを考える。この傾向は物を購入する際にも表れ、本当にこれが必要であるかどうかを、じっくり吟味して購入している人が女性には多いと感じる。
この経済危機は、主婦をはじめとする女性にも大きな影響を与えている。彼女たちは自分がどのようにやりくりし、家計を支えていくのか、といったことを考え、それに従って行動している。現実を受け止め、うまく対処する習性が自然と身に付いているように思う。最近、女性社員を役員に登用する企業が増えているが、現実を直視するその姿勢は、企業に、とてもよい影響を与えるはずだとわたしは考えている。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授