未曾有の不況によって、大規模なリストラ計画、人員の配置転換を発表する企業は少なくない。こうした状況において、何をモチベーションに働くことができるのだろうか。
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「100年に1度の……」。この表現が世間の耳目を集めている。難局をいかに乗りきるか、議論百出である。マスコミのみならず、周囲のビジネスマンの口からも同様の言葉が聞こえる。最近、事務部門の管理職レベルでのコストダウンの手法(文房具の発注、管理なども含めて)についてあれこれと情報交換されている場に立ち会うことがあった。細々としたコストダウンにまで目を光らせなければならないミドルには、「本当にお疲れさまです」の言葉しかない。
前回、出光興産の創業者である出光佐三を取り上げた。敗戦後の出光に残されたのは、膨大な借金と外地からの引き揚げ者を含む1000名余の従業員だった。本業である石油販売は占領政策により許されなかった。出光は従業員の雇用を死守するため、ありとあらゆる仕事に手を出した。その中の1つがラジオの修理業であり、苦労の末店舗網を全国に展開した。昭和20年代半ばになって出光が石油事業に復帰した際、この店舗網が大きな効果を生む。いち早く石油スタンドに衣替えすることで復帰に弾みがついたのだった。難局にあって打った手が後に功を奏したのだ。
こうした事例は少なくない。例えば、業務用空調機および化学品の大手メーカーであるダイキン工業の井上礼之会長は、オイルショック後の難局を同社がいかに乗り切り後々の発展につなげたか、さらには今回の難局をいかに打破していくのかを次のように述べている*1。
「オイルショックが起こったとき、余剰人員を削減する代わりに、販売会社をつくってそこに出向させました。それが現在の強い国内販売網の基盤になったのです。今回も、3月までに1000人規模の人材の再配置を検討します。景気が回復したときの大きな礎になるはずです」
加えて、難局の時代の生かし方についても述べている。
「厳しい時代こそ、企業の体質改革や人事育成の大いなるチャンスです。『人を基軸に』の信念を貫き、帰属意識やチームワークを高め、吹きすさぶ風の中しなやかに前進していけたらと思います」
非常に理想的な経営手法だと思われる。人員削減に手を染めず、なおかつそれが将来の成長の源となるのである。ただし、不慣れかつ自らが磨き上げてきた経験を生かせそうにない職場に配転させられたミドルにとっては、相当に辛い、不遇の日々が続くこととなろう(クビにならないだけましかもしれないが)。
もちろん、会社存亡の時のみならず平時でも合点のいかない人事に仕事を投げ出したくなった経験を持つ「サラリーマン」は少なくないだろう。「サラリーマンはそんなもの」とあきらめて、面従腹背で目の前の仕事を漫然と処理するだけの日々を送る。あなたの部下や周りにもそんな人がいるかもしれない。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授