これは戦争ではない、スポーツだ!小松裕の「スポーツドクター奮闘記」(1/2 ページ)

10年前のNATO軍の空爆による傷跡が今も残るベオグラードの街。そこで出会った現地セルビア人の青年から大切なことを学びました。

» 2009年09月02日 08時15分 公開
[小松裕(国立スポーツ科学センター),ITmedia]

 セルビアの首都、ベオグラードで開催された「第25回 ユニバーシアード競技大会」は7月12日に閉幕しました。今回のユニバーシアードで、日本代表選手団は合計73個のメダル(金20、銀21、銅32)を獲得し、過去最高の成績でした。選手たちはたくさんのことを学び、これから立派なオリンピック選手に育って活躍してくれることでしょう。

 前回のコラムでは、国際総合競技大会の役割として、選手村での生活という普段とはまったく違う環境の中で試合を行い、世界で勝てる選手になるためには、たくましさを身につけなければならないという話をしました。しかし、選手たちが学んだことは、試合に勝つためのことだけではありません。世界各国から集まった選手たちと試合会場だけではなく選手村でも過ごしたほか、ボランティアとしてお手伝いしてくれたセルビアの若者と接したことで、国際親善や世界の平和に関して多くのものを学び取ったはずです。

 もちろん、勝つことは大きな目的ですが、これから国際スポーツ人として育っていく選手たちにとって、これらの経験もとても大切です。実際に日本代表選手団の編成方針や使命にも「参加各国・地域との国際・文化交流をはかり、友好を深め、国際親善・世界平和に寄与する」と明記されています。

ボランティアスタッフとも仲良くする

 選手村や競技会場では、チームごとに日本選手団の面倒を見てくれるボランティアのスタッフが付き添います。そのほか、競技の進行にかかわるスタッフ、輸送を担当するスタッフなど、さまざまなボランティアがかかわります。大会によっては、財政難であったり、人員不足であったりして、満足な大会運営が行われないことがあります。「試合会場に行くバスが時間通りに来ない」「練習時間が突然変更された」などということはしばしばです。

 試合に勝つためには、そうした状況に対して抗議したり、自分たちの権利を主張したりすることも大事ですが、運営する側も「お金がないのだから仕方ないじゃない」「全員がプロではあるまいし、一生懸命やっているのだから許してよ」といった言い分があります。適当なところで折り合いをつけて、スタッフたちと仲良くすることも、まわりを味方にするという意味で重要です。

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