25%削減目標が意味する日本の将来――富士通 環境経営トップセミナー基調講演(1/3 ページ)

鳩山内閣が発表した、2020年までに温室効果ガスを1990年比で25%削減するという中期目標。この数字が意味するものは何か。その背景や達成するための道筋を示した国立環境研究所特別客員研究員 西岡秀三氏の講演をリポートする。

» 2009年11月30日 18時24分 公開
[栗田昌宜,環境メディア]
環境メディア

 「富士通 環境経営トップセミナー」が11月25日、東京の大手町サンケイプラザで開催された。

 同セミナーはこれからの企業経営に不可欠な環境経営戦略の立案を支援することを目的としたもので、有識者による講演や、環境経営に先進的に取り組んでいる企業の担当者による事例紹介などが行われた。ここでは、温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減するという鳩山内閣が発表した中期目標の背景や、それを達成するための道筋を示した国立環境研究所特別客員研究員 西岡秀三氏による基調講演「25%削減目標が意味する日本の将来」をリポートする。

国立環境研究所特別客員研究員 西岡秀三氏 国立環境研究所特別客員研究員 西岡秀三氏

 西岡氏はまず、低炭素社会に移行しなければならないのは科学的結論からの必然であると指摘。現在は自然の吸収量の2倍以上のCO2が人為的に排出されており(年間72億トン)、気温上昇を食い止めて気候を安定化させるためには、CO2の排出量を現在の半分以下にしなければならない。また、温暖化が進めば進むほど被害も大きくなるため、平均気温の上昇を産業革命以前の水準に比べて2度程度にとどめるべきだというのが国際的なコンセンサスになっているという。

人為的なCO2排出量と自然吸収量との関係。CO2は毎年大気中に41億トンずつたまり続けており、このままの状態が続けばあと10〜30年で危険なレベルに達するという 人為的なCO2排出量と自然吸収量との関係。CO2は毎年大気中に41億トンずつたまり続けており、このままの状態が続けばあと10〜30年で危険なレベルに達するという
温暖化対策を十分に行わなかった場合の日本の被害額。温暖化対策を何も講じなかった場合(グラフ右)は、21世紀末には年間17兆円の被害が出る。温度上昇を2.1度で食い止めるCO2濃度450ppm安定化の場合(グラフ左)でも、年間11兆円の被害が生じる 温暖化対策を十分に行わなかった場合の日本の被害額。温暖化対策を何も講じなかった場合(グラフ右)は、21世紀末には年間17兆円の被害が出る。温度上昇を2.1度で食い止めるCO2濃度450ppm安定化の場合(グラフ左)でも、年間11兆円の被害が生じる
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