グローバル企業と比べて日本企業の多くのCIOは、調整タイプのIT部門長であり、たとえ社内でうまく役割を担っていたとしても、外部環境で通用するかは疑問である。
本連載もいよいよ最終回となりました。第1回から第5回まで経営とITというテーマで、過去から現在に至るまでの潮流やその時々の潮目について、顧客企業、サービスプロバイダの双方の観点でわたしの見解を述べてきましたが、いかがだったでしょうか。
本連載のテーマである経営とITの融合という命題において、言うまでもなくCIO(最高情報責任者)という存在は重要な役割を果たします。この命題についてCIO自身はどのようにとらえているのかということは、皆さんも非常に興味を持たれることと思います。
最終回は全世界2500人を超えるCIOに直接インタビューを実施した調査レポート「IBM Global CIO Study 2009」の調査結果を基に、新時代における経営とITの架け橋となるイノベーション・リーダーのあり方について述べます。
まず、本調査で明らかになったことは、CIOには3対の6つの役割が求められていることです。CIOが実現すべき目標として「イノベーションの具現化」、「投資対効果の最大化」、「ビジネスへの貢献拡大」という3つが挙げられ、それぞれに対して、一見相反するように見える役割が求められていることが分かりました(図1)。
1つ目のイノベーションの具現化については、どのようなイノベーションが必要なのかというビジョン、ビジョンを実現する革新的なビジネスプロセスの設計、それをサポートするITなどのあるべき姿を描くことができる洞察力に富んだビジョナリストとしての役割と、それらの実現過程と運用をマネージする有能な実務者としての役割が求められます。
2つ目の投資対効果の最大化については、社内外の顧客ニーズを把握し、より良い施策を立案する「見識ある価値創造者」という役割とともに、コスト削減に向けた方策をたゆみなく追求する「あくなきコスト削減追及者」という役割が求められます。
3つ目のビジネスへの貢献拡大では、CFO(最高財務責任者)などほかの経営層や事業部門リーダーと協働することで積極的に経営に関与・貢献する「協働するビジネスリーダー」としての役割と、IT部門の専門性を高めて効果的に新しい施策の導入に取り組む「組織を活性化するITサービス提供者」の役割が求められます。
これら6つの役割をすべて担うのは難しいですが、調査を通じてこのような新時代のCIO像が明らかになりました。一人ですべてを担うのが難しければ、サブCIOやチームを組んで6つの役割を果たすというやり方もあります。実際、ある高成長企業のCIOは6つの役割をチームとして実現し、経営とITの融合を成功させています。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授