“生分解性”がキーワードのエコプロダクツ――「エコプロダクツ2009」リポート

微生物によって自然に分解される生分解性プラスチックは、使用後の環境負荷を低減するものとして注目されている。ここでは“生分解性”をキーワードに、エコプロダクツ2009の展示物をリポートする。

» 2009年12月17日 12時07分 公開
[栗田昌宜,環境メディア]
環境メディア

 「生分解性」。物質が土中や水中の微生物によって分解される性質のことだ。天然の有機物は基本的に生分解性を持つため、「生分解性〜」という言葉が頭につくのは、プラスチックなどのように自然界では分解されない(されにくい)物質が生分解性を持つ場合に限られる。なお分解には生分解だけでなく、光分解や熱分解や、酸化分解などさまざまなバリエーションがある。

 「エコプロダクツ2009」では、バイオマス由来、または生分解性を持つプラスチック素材・製品のメーカー/ベンダーを集めた「バイオプラスチックパビリオン」が出展していた。バイオプラスチックの普及促進団体である日本バイオプラスチック協会は、バイオマス由来のプラスチックに「バイオマスプラ」、生分解性を持つプラスチックに「グリーンプラ」のシンボルマークと識別表示を認証して普及に努めている。

 バイオマスプラとグリーンプラのシンボルマークを共に持つ製品は多いが、生分解性をメインに訴求している製品には、レジ袋や食品包装袋、フィルム、コップ、トレー、ストローなど食べ物に関連するものが多い。使用後は生ゴミなどと一緒に燃えるゴミとして出されたり、コンポスト容器で分解処理されたりすることを想定しているからだろう。

植物由来生分解性プラスチック製品を展示していたバイオプラスチックパビリオンのミヤゲンブース 植物由来生分解性プラスチック製品を展示していたバイオプラスチックパビリオンのミヤゲンブース

ケーエスピーの生分解性ゴミ袋/レジ袋の展示 ケーエスピーの生分解性ゴミ袋/レジ袋の展示

 生分解性プラスチックで注目したいのは、マルチと呼ばれる農業用フィルム。マルチで畝を覆っておくと雑草の繁殖を防ぎ、地温の上昇/上昇抑制ができるため、農薬使用量の削減や農作業の省力化・効率化を行うことができる。ただしマルチは1回限りの使い捨てで、収穫後に畝からはぎ取って回収する作業や廃棄処理に費用がかかるのがネックだった。

 しかし生分解性マルチなら土壌にすき込めば水とCO2に分解されるため、回収や廃棄処理が不要。農業従事者が減少・高齢化する中で安心・安全な農作物を効率的に生産するためにも、生分解性マルチは今後ますます重要になっていくのではないだろうか。

生分解性の農業用マルチフィルムを使えば、回収作業や廃棄処理費用が不要になる。展示していたのは三菱樹脂 生分解性の農業用マルチフィルムを使えば、回収作業や廃棄処理費用が不要になる。展示していたのは三菱樹脂

 ただしネックは、やはり価格。生分解性マルチを出展していた三菱化学のブース担当者によると、生分解性マルチは現在主流のポリエチレン製マルチの約3倍高価だという。なお同社は植物由来の生分解性プラスチック「GS Pla」を製造しており、現在は化石燃料由来成分で製造している生分解性マルチの原料をGS Plaに切り替える計画。GS Plaの生産量が高まれば、生分解性マルチの価格も下がっていくだろうとしている。

 なお生分解性プラスチックには、すべてが微生物によって分解されて水とCO2になる完全生分解性のものと、生分解性の原料と非生分解性の原料を混ぜて作った部分生分解性のものがある。土壌を考える場合は、完全生分解性/部分生分解性の差異にも着目したい。

 “生分解性”で一風変わった試みを展示していたのはオンワードホールディングス。同社は土に埋めるとファスナーなどの金属部品以外は1年で水とCO2に分解される「生分解スーツ」を展示していた。

 生分解スーツは天然素材で作られているため生分解しても不思議ではないが、同スーツの“キモ”は、生分解したあとに土壌を汚染しないこと。そのために同社は素材への添加物を吟味して、水とCO2以外のものを土壌に残さないようにしたという。このため価格は通常のスーツに比べて少し高くなるが、「消費者の反応にもよるが、半年〜1年後の製品化を目指したい」(オンワードホールディングスのブース担当者)としている。

オンワードホールディングスが展示していた「生分解スーツ」 オンワードホールディングスが展示していた「生分解スーツ」

土に埋めて後163日目の生分解スーツ。素材によって進行具合は異なるが、生分解が進んでいることが分かる 土に埋めて後163日目の生分解スーツ。素材によって進行具合は異なるが、生分解が進んでいることが分かる

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