自動車については、内陸部ではネクストリッチ層の6割、沿岸部では7割がすでに保有している(図表4)。しかも図表5を見ると、その保有者の8割程度は最近3年以内に自動車を購入している。この中には買い替えた人が当然含まれるであろうが、大半が新規購入者であると想定される。中国の自動車販売台数は、2006年が720万台、2007年870万台、2008年930万台、2009年は1360万台で、このうち乗用車のみでは1030万台となり、中国は世界最大の自動車市場となっている。今回の調査結果を見ても、この2〜3年の爆発的な自動車販売台数の伸びはネクストリッチ層が支えていることが容易に想像できる。
図表6で保有する自動車のサイズ(排気量)をみると、沿岸部と内陸部では大きな差が見られる。内陸部では1600cc以下の小型車が中心(全体保有の6割弱)であるのに対して、沿岸部では1600cc以上の中大型車が全体保有の6割程度を占めている。
当然ながら、購入費用も、同様な傾向があり(図表7)、内陸部では15万元以下が7割弱で、10万元未満という回答も3割弱となっている一方で、沿岸部では15万元以上が5割弱を占めていて、10万元弱という回答は2割を切っている。つまり、内陸部で売れている車は10万元をはさんだレンジであるのに対し、沿岸部で売れている車は15万元をはさんだレンジで、両者には5万元程度の開きがある。
自動車をまだ持っていない層においても、沿岸部では2年以内に購入したいという回答が7割弱、内陸部でも2年以内の購入とする回答が5割弱を占めている。それぞれ購入の予定はないという数字は2割程度であるから、ネクストリッチ層においては、今、保有していない人でも、そのほとんどはこれから数年のうちには自動車の新規購入を考えていることになる(図表8)。この結果を見ると、2009年に小型車が大ブレイクした中国の自動車市場の盛り上がりが当分続くことは確実である。
自動車の選定における価格以外の重視ポイントを見ると(図表9)、走行性能が最も重視され、内陸部では、次いで燃費となっている。これは自動車以外でも共通しており、内陸部ほど商品購入の時には維持コストが重視される傾向がある。アフターサービスは沿岸部、内陸部ともに重視されている。
一方、ブランドは沿岸部では重視されているが内陸部ではそれほどでもない。内陸部のネクストリッチ層はデザインやブランドなどよりも性能や経済性、アフターサービスといった実質的な商品価値を厳しく見ている傾向が現れている。これをみると、今後はエントリーユーザーの価格志向に応じたコストパフォーマンスに優れた新車開発力が重要となってくることが想定できる。
次回は内陸部の消費者が日本企業をどうみているか、また、内陸部の競争相手として台頭著しい中国企業の実態について紹介していきたい。
此本臣吾(このもと しんご)
株式会社 野村総合研究所 執行役員 システムコンサルティング事業本部 副本部長
1985年3月、東京大学大学院修了。同年4月に野村総合研究所 産業経済研究部に入社。アジア事業開発部 上級専門職、台北事務所長、産業コンサルティング部長、技術・産業コンサルティング部長、コンサルティング第二事業本部 副本部長 兼 情報・通信コンサルティング部長を経て、2004年4月に執行役員 コンサルティング第三事業本部長 兼 アジア・中国事業コンサルティング部長。2009年4月より現職。
著書に「戦略的BPO活用入門」(監訳、東洋経済新報社)、「2015年の中国」(編著、東洋経済新報社)、「2010年のアジア」(共著、東洋経済新報社)など。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授