4月1日から野村総合研究所の社長に着任する嶋本専務が所信表明を行った。金融分野での売り上げが大多数を占める現状を指摘した。
野村総合研究所(NRI)は3月12日、8年間社長を務めた藤沼彰久会長兼社長に代わり4月1日付けで社長に就任する嶋本正氏(現代表取締役兼専務執行役員)の新任会見を開いた。新体制では基本路線としてNRIが2008年4月に発表した長期経営計画「ビジョン2015」を踏襲しつつ、「第3の創業」をテーマに既存事業の強化や刷新を図る。
NRIは過去に大きく2つの「創業」を経験している。1つ目は1965年の野村総合研究所(当時)と1966年の野村コンピュータシステムの設立であり、2つ目は1988年の両社合併である。第1創業期はコンサルティング会社とシステム会社が共存する時代であり、第2創業期は1つの会社の中で2つのビジネスが共生してきた。「2010年からは“第3の創業”と銘打ち、コンサルティングとシステムの両事業を掛け合わせてさらに拡大していく」と嶋本氏は方針を示した。
具体的には、これまで課題だったコンサルティング事業とシステム事業のコミュニケーション不足を解消し、双方の部門の連携強化を目指す。特に顧客に対するビジネスにおいて両者が重複する部分である「企業経営・政策立案に関する提言」「経営・業務革新のソリューション提示」「システム設計・ソリューション提供」について注力していく(図1)。
それに向けた2010年度の強化ポイントについては、提言力、マーケティング力、事業創発力、品質力、人財開発力をキーワードに掲げた。その中で嶋本氏が強調したのがマーケティング力である。同社の売り上げの約70%は、野村證券やセブン銀行のシステム開発をはじめとする金融関連分野での案件が占めており、残り30%にあたる他産業分野の開拓、拡大が先の長期経営計画においても喫緊の課題として挙がっていた。そこで全社的な重要顧客を選定し、重点的な営業を推し進めていく。その代表的な産業分野がグローバル製造業である。今回の組織改変に併せて新たに「流通グローバル事業推進部」を設立したのもその表れである。
「金融業界が低迷しているこの時期こそ、他産業分野のビジネスを伸ばしていくチャンス。わたし自身、(サプライチェーンマネジメントなど)産業関連システムを担当していたこともあり、この分野に対する思い入れは強い。ゆくゆくは金融分野の売り上げを超える“産金(さんきん)交代”を実現したい」(嶋本氏)
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授