例えばiPhoneとは何かと聞かれ、一言でどのように説明するでしょうか。この場合、Webブラウザやタッチパネルではありません。
成功している企業や製品には、必ず明快なコンセプトが存在します。例えば、ライフスタイルの一部であるアパレルを汎用品としての部品に見立て成長したユニクロ。利便性を打ち出し、注文の翌日配達を実現したオフィス用品販売のアスクル。製品販売からサービスを主体としたソリューション企業への転換したIBMなど数多くの事例があります。
『ハイ・コンセプト:新しいことを考え出す人の時代』の著者、ダニエルピンク氏は、情報の氾濫している現代においては、情報そのものではなく、情報を活用して新たなものを生み出す能力が重要であると述べています。現在は、情報の時代からコンセプトの時代への転換期なのです。
ではビジネスにおいて、コンセプトとは一体何でしょうか。コンセプトの評価軸は何でしょうか。さらにどのように構想していくべきでしょうか。当連載では、事業戦略上「新しく」「価値ある」コンセプトを「イノベーションコンセプト」としてくくり、これらの問いに示唆を与えていきます。
コンセプトとは、製品や事実ではなく、詳細機能やスペックでもありません。製品や事実の背後にある、一貫性ある本質こそコンセプトです。いつでも本質とは、目に見えず(不可視的)、かつ言葉で表現することで力を得る新しい価値観です。具体的な製品機能やサービスの詳細を伝えることは本質の議論ではありません。もちろん詳細機能や具体的事実をおさえるのは必要ですが、十分ではないのです。
例えばiPhoneとは何かと聞かれ、一言でどのように説明するでしょうか。 Webブラウザー、使いやすいタッチパネルの説明でしょうか、それとも通信とモバイル端末の融合からでしょうか。iPhoneのイノベーションコンセプトとは「誰でも使える、手のひらサイズのネットPC」ではないでしょうか。iPodであれば「誰でも使える、インターネット版携帯音楽端末」でしょう。
このコンセプトにイノベーションが付いた「イノベーションコンセプト」とは、顧客から見て、「分かりやすく」「斬新で」「価値ある」コンセプト(本質)です。
「斬新で」とは、明快な価値を提供し、かつ顧客から見て競合他社にはない、新しさを指します。また「価値ある」とは、ほかの製品やサービスとは異なる「価値ある」ものの提供です。それは企業が提供する便益(ベネフィット)を受け取るため、顧客が進んで対価(金銭)を支払うものでなければなりません。多くの優れたイノベーションコンセプトが、市場環境や顧客ニーズの変化、はたまた企業戦略の転換、および時代の変化に応じて登場しています。具体的にイノベーションコンセプト図で全体を示します。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授