リーダーが直面する5つの葛藤とはビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2010年07月15日 08時00分 公開
[小笹芳央,ITmedia]
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論理 v.s. 感情

 物事の判断は、事柄に関する情報を収集して「論理や合理」を軸に判断を下さなければなりません。しかし、時には「感性や感覚」でブレークスルーすることも大切なのです。論理や合理によって導き出された「正解」は、多くの人の理解を得やすいというメリットがある一方、往々にして独自性に欠けることが多いのです。逆に感性や感覚だけの「決断」は、永続性や再現性に乏しく、多くの人々の納得を得るのが難しいでしょう。

 リーダーには、自分自身の特性を十分に理解した上で、「論理」と「感覚」を上手に使い分ける器用さが必要です。「論理に裏付けられた感性」や「感性の奥に潜む合理性」こそ、継続的に人々を惹きつける最高の芸術活動と言えるでしょう。

分化 v.s. 統合

 組織をデザインする上で、その規模拡大に伴って専門分化の必要度が増加します。リーダーは業務効率を高めるため、一定のグループや個人の専門分化を図ればたちまち、組織全体の意識統合(一体感)の弱体化に直面します。

 リーダーは適切な分化を推進しながらも、その逆張りとして全体統合に向けた施策を強化しなければならないのです。全体統合を怠ると組織がバラバラになるし、分化を怠ると組織拡大のスピードが鈍る。優秀なリーダーは、「分化」と「統合」の絶妙な繰り返しによって組織を拡大発展させていくのです。

 ここまでご紹介したように、相対立するものを統合するというリーダーの行動は、単に「中間をとる、バランスをとる」ということではありません。状況に応じて自覚的に、「時には右に、またある時には左に、大きくタクトを振りながら、一定の「時間」「空間」のなかで「全体としての大きな統合を図る」べきなのです。

 リーダーの選択肢は無限に存在し、「正解」は誰も与えてくれません。矛盾する2項目を統合していくプロセスにこそ、リーダーシップのスタイルが存在し、リーダーの真価が問われるのです。

 また、これらはその決断を下した瞬間に「正解」「不正解」が決まるものではありません。最も大切なことは、自らが下した判断が、後に正解だったと言えるような結果に導くことです。決断の実行場面においてすべてのエネルギーを投入した結果、「こちらに振る決断をしてよかった」という結果を出すためにリーダーが腹を括り、牽引(けんいん)力を持つことが最も大切です。

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著者プロフィール:小笹芳央

1961年大阪府出身。早稲田大学政治経済学部卒業後、(株)リクルート入社。2000年、(株)リンクアンドモチベーションを設立、同社代表取締役社長就任。気鋭の企業変革コンサルタントとして注目を集め、グループの代表として経営に携わる一方、講演会やテレビ出演などで活躍。同社は設立8年で東証一部に上場、「モチベーションエンジニアリング」という独自の技術で,企業変革のサポートし,幅広い業界からその実効性が支持されている。Forbesアジア主催Asia's 200 Best Under A Billion(2009年),企業家ネットワーク及び経済誌(企業家倶楽部)主催 第10回年間優秀企業家賞(2008年)受賞。主な著書に『自分は評価されていないと思ったら読む本』『会社の品格』『モチベーション・マネジメント』『モチベーション・リーダーシップ』など多数。


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