日本企業の強みの1つであったOJT。このOJTをうまく復活させる事ができれば、SEのコミュニケーション能力の向上にも大きく寄与します。では、そのOJTを復活させ、有効に機能させるためにはどのような工夫が必要なのでしょうか?
「OJTの復活」、最近このフレーズをお客さま先で良く耳にします。人が付加価値の源泉であり、人財のスキルを上げてより高い付加価値を生み出すためには、企業内で人財を育成する仕組みを用意する必要がある。そのためには、多くの日本企業が以前は当たり前のように取組んでいたOJTを復活させるべきだという考えです。確かに、OJTは日本企業の強みの源泉の1つだったとわたしも思います。SEばかりでなく、企業のコミュニケーション能力を向上させる手法としても、OJTは非常に有効な手段の1つだと言えます。しかし、一旦やめてしまったOJTをそんなに簡単に復活させる事が出来るのでしょうか?今回は、OJTを復活させるために企業で考えなければならないこと、またOJTでSEのコミュニケーション能力を向上させるための有効な手法を、具体例とともに解説します。
そもそもOJTと言うと、皆さんはどのようなやり方を思い浮かべますか?90年代のバブル崩壊以前に社会人になったかたがたの多くは、「俺の背中を見て学べ」、あるいは「技は人から盗むものだ」といったような考えに基づくOJTを想定される人も多いのではないでしょうか?このようなやり方でOJTを復活させる事は、多くの企業にとっては非常に難しい状況になっています。それは、OJTを提供する側と受ける側、および企業の社員構成が変化しているからです。この状況を、ビジネスで現場の中核となるべき30代および40代前半で見てみましょう。(図1参照)
この世代は「アラウンド氷河期世代」などと呼ばれる事もあるようですが、前回も書いたようにバブル崩壊後に企業が採用を絞った世代です。この世代の特徴としては、以下のような事が挙げられます。
このような特徴を持った層に、いきなりOJTの復活と号令をかけても具体的な行動に移すのは難しいと言えるでしょう。また、理屈上はこのような層が論理的に行動に移すためにはOJT実績を評価に加える必要があるのですが、人材育成の視点を評価制度に取り込むようなBSC(バランスト・スコアカード)のような考え方は日本企業がうまく活用できていない手法である事も考慮する必要があるでしょう。
次に、OJTを受ける側の変化に関しても少し触れておきます。この世代は、「アラウンドIT世代」とも呼ばれるようですが、教育制度の変化も影響し40代半ば以上の人から見るとなかなか理解しがたい特徴も持ち合わせています。
もちろん、全ての人がこうだというわけではありませんが、世代の特徴としてはこのようなことが挙げられます。このような特徴を持った社員を指導していくという事も念頭に置いた上で、企業の状況に応じたOJTの手法・仕組みを考える必要があります。
このような状況を押さえた上で、企業でのOJTの復活させるためにはどのような事を考えるべきでしょうか?さらには、SEのコミュニケーション能力を向上させるためのOJTとして有効な手法はどのようなものがあるのでしょうか?
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授