集合的リーダーシップが組織を変える!
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
米国の「ビジネスウィーク」誌が毎年発表するベスト経営者ランキングをさかのぼると、10年くらいの間に“ベスト経営者”と“ワースト経営者”の両方に名前の挙がる人がいます。2000年代の半ばにベスト〜に名を連ねたある日本の経営者は、次の社長の代になってから当時の経営方針の問題が顕在化しました。では一体、素晴らしいリーダーとは、どんな人なのでしょう。
わたしはこのような「誰?」を問う回答について限界を感じています。「素晴らしい」はずの人がかじ取りを誤り、そのリーダーシップが機能しなくなることが珍しくないからです。ここから浮かんでくるのは、ビジネス界、政界、スポーツ界など、どの分野をみても共通する属人的リーダーシップ論の行き詰まりです。特定個人の資質や経験値に依存することの危険性が、これまでにないほど高くなっているのが現在です。
素晴らしい(はずの)リーダーが間違う危険性が高まり、リーダーの賞味期限が短縮化している背景には、かつてないほど社会が複雑化している現実があります。
国際紛争の問題解決プロセスを支援する世界的ファシリテーターであるアダム・カヘン氏(レオス・パートナーズ社)は、これを次の3つの複雑性から説明しています。
1つは、「ダイナミックな複雑性」の高まりです。世界がグローバルにつながる中、地理的あるいは時間的(またはその両方)な隔たりを伴う因果関係が強まっています。北アフリカでフェイスブック革命が起きると、日本の地方の煎餅屋さんの収益が悪化する……。
これは“風が吹けば桶屋が儲かる”のような因果関係、あるいはカオス理論の枠組みの中で唱えられるバタフライ効果……“ブラジルで蝶が羽ばたくとテキサスでトルネードが起きる”そのものです。
2つめは、「社会的な複雑性」の高まりです。グローバル企業においては、既に「トリプルボトムライン」(経済・社会・環境負荷という3つの側面からの決算結果)の開示は必須。業績だけではなく、社会全体の利害関係に対し、どう関わっているかが問われています。
3つめは、「生成的な複雑性」の高まりです。過去の延長線上で次の展開を予測することが困難になり、多くの人々が未来の不確実性を感じています。
属人的リーダーシップの限界を補うために、フォロワー=リーダーに従う人、という古い常識の打破が不可欠です。こうしたフォロワーの概念は、能力と権限を有する“長”が人々を従え、管理するという旧来のリーダー像と裏表の関係にあるからです。
わたし自身、組織変革やビジョン構築などのプロセスをお手伝いする過程で、事務局を務める中堅・若手社員の視点に助けられることがあります。経営から一歩引いて物事を見つめられる分、経営幹部が見えないものを彼ら彼女らは見ることができるのです。
ところがヒエラルキーや固定化した役割意識が組織を支配していると、フォロワーの多様な視点を顕在化させることができません。
トップマネジメントがフォロワーを重要なステークホルダーと位置づけ、その声に耳を傾けることが大きな扉を開く一助になります。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授