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» 2011年03月10日 07時00分 公開

ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術:もうカリスマは要らない (2/2)

[吉田典生(ドリームコーチ・ドットコム),ITmedia]
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部下力とは「貢献力」×「批判力」

 20年ほど前にフォロワーシップを体系的に解説して重要性を唱えたロバート・ケリー教授(米国カーネギー・メロン大学)は、その思考・行動傾向を「貢献力」と「批判力」という2軸から説明しています。「貢献力」とは、与えられた役割を受け入れて忠実に取り組む意識や行動。また「批判力」は、既定の役割や上司からの指示について自分で考え、主張する意識、行動です。

 なぜこの2軸が重要なのか。それは複雑性の増す環境下で、正解が1つではない課題に速やかに着手し、行動しながら学び、修正しながら進む組織全体の学習力が必要だからです。そこでは必ずしもベターではない自分の役割や状況自体を受け入れること(貢献力)も、組織の一員として必要でしょう。しかし同時に、全体最適に向けて自分の見解を表明し、多様な視点を混ぜ合わせる中で、組織の集合知レベルを上げる姿勢(批判力)も必要です。

 フォロワーが“組織や上司に従う人”という固定観念を脱すること、理念や役割への忠誠と自律的な思考・行動をブレンドさせること。それを促していくための組織的メッセージや、リーダーの姿勢がますます重要になると思います。

数的優位なフォロワーとの関係性から生まれるリーダーシップ

 サッカー日本代表監督であるザッケローニ氏が、アジアカップを制したことで高く評価されています。しかしそのリーダーシップは、ここ数年間で大きく成長した代表選手たちの技量はもちろん、リーダーである監督との関わり方の変容を抜きに語れません。

 象徴的な場面がオーストラリアとの息詰まる決勝戦の後半にありました。背の高い相手の攻撃を防ぐために、監督は控えだった長身DFの岩政選手(鹿島アントラーズ)を入れ、DFにいた今野選手をボランチ(守備的MF)に移動させる指示を出しました。

 そのとき今野選手はベンチに向かって大きく“×”のサインを送りました。これは「この重要な場面で経験のないポジションについて役割を果たすことはできない」という意思表示でした。

実はこの今野選手の“批判力”が、勝利の大きな契機になりました。いったん今野選手の意向を受け入れた監督は、しばらく戦況を見守った後、今度は長友選手(インテル)の左サイドバックに岩政選手を入れ、長友選手を前線に移動させたのです(長友選手はイタリアのセリエAAでも同じポジションを経験)。これが歴史的な李忠成選手の決勝点につながりました。フォロワーシップという観点から見たとき、今野選手こそが隠れたMVPだとわたしは思います。

 このように、とかく英雄物語にもなればA級戦犯にもされる属人的リーダーシップは、ほんとうのところフォロワーとの関係性により大いに左右されます。リーダーに好影響をもたらすフォロワーシップの開発こそが、これからの組織・人材開発の大きなテーマです。そこから現れてくる良質なフォロワーシップは、属人的リーダーシップの限界を打ち破る集合的リーダーシップへの扉を開きます。

著者プロフィール:吉田 典生

1963年、三重県伊勢市生まれ。関西大学社会学部卒。有限会社ドリームコーチ・ドットコム代表取締役。就職情報誌の編集等を経て、フリージャーナリストとして組織の人材戦略やキャリア開発などを主なテーマに幅広く取材、執筆活動を展開。その傍らでリーダーシップや行動心理学、コーチング等の学習をつづけ、2000年に有限会社ドリームコーチ・ドットコムを設立。現在、コミュニケーションコンサルタント、エグゼクティブコーチとして、対話を通じた組織変革の支援やリーダーシップ開発に取り組む。製造業、IT系企業、流通業、不動産業など、さまざまな業種、および個人契約を含む経営幹部、管理職層をクライアントとする。ICF(国際コーチ連盟)マスター認定コーチ、米国インスケープ社認定Discインストラクター、WCJ(ワールドカフェ・コミュニティ・ジャパン)アドバイザー。著書『部下を自立させる上司の技術』、『ビジョンマッピング』(いずれもPHP研究所)、『なぜ、「できる人」は「できる人」を育てられないのか?』、『「できる人」で終わる人、「伸ばす人」に変わる人』など。



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