「組織の壁を壊すことがWeb最適化への第一歩」――リクルート、友澤大輔氏ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(1/2 ページ)

情報誌やインターネットなどさまざまな媒体を手掛けるリクルートは、紙からWebへ事業の軸足を移しつつある。そのために同社では、各事業での実践的なマーケティングノウハウの実践のみならず組織に横串を通す組織を設立するなど、全社を挙げてWeb媒体の収益化につなげる活動を推進している最中だ。

» 2011年03月22日 07時00分 公開
[岡崎勝己,ITmedia]

“紙”から“Web”に軸足をシフト

 企業同士、もしくは企業と人を結びつける場を、情報誌やインターネット、モバイルなど多様なメディアを通じて提供しているリクルート。その活動領域は、人材や自動車、住宅、医療、旅行、エンタテインメントなど極めて多岐にわたる。

リクルートの友澤 大輔氏

 そんな同社は収益の柱を「紙」から「Web」のメディアにシフトさせている最中だ。事実、同社の売上に占める両者の比率を見ると、2002年に76.1%であった前者は、2007年には22.2%にまで低下。逆に後者は15.9%から39.2%と2倍以上の伸びを達成し、同社のWebサイトのユニーク・ユーザー数はすでに4000万を数えるほどだ。また、2010年7月に開始した割引チケット共同購入サイト「ポンパレ」の収益化にも力を入れており、そのフェースブックページは日本で5指に入るほど多くのファンを獲得することに成功している。また最近ではRecruit Audience Networkという新しいネット広告商品を販売。この両サービスは非常に好調である。

 そもそも同社は書店ルートに強みを持ち、店頭での媒体露出で競合他社に圧倒的な優位性を確立することで急成長を遂げてきた。にもかかわらず、ここにきてネットシフトを鮮明に打ち出した背景には、Webメディアの隆盛という現実がある。

 ただし、紙からWebへのシフトと一言で言っても、その実現は一筋縄ではいかなかったようだ。リクルート MIT United インターネットマーケティング室マーケティングサイエンスグループゼネラルマネジャーの友澤大輔氏は、2月24日に開催された「第19回ITmediaエグゼクティブセミナー」の特別講演で、舞台裏の取り組みを次のように解説した。

 「当社は、各事業での個別最適の視点で施策を考えがちだ。また、Webメディアではユーザーとコミュニケーションを取りつつコンテンツ作ることが求められるものの、従来は編集主導でのコンテンツ作りが行われていたことから意識改革も求められた。これらの課題を解決するため、5年をかけて行ってきた活動のキーワードこそ、“積極的なネットマーケティングのR&Dと型化”、“ユーザーから学ぶ姿勢”、“最適化”なのだ」

Webシフトを可能にした3つの施策

 まず、全社スタッフでのR&Dと型化とは、カンパニーの壁を越えたWebメディア作りやノウハウを共有するため体制整備に関する活動を意味する。そのために3年前リクルートでは、マーケティングとITの観点から各カンパニーの横串を通す新組織、MIT Unitedを新設。同組織で各カンパニーが抱える課題の解決策や売上の底上げに向けた施策を検討し、いわばビジネスモデルのパターン化を図ることで、ビジネスの横展開を実現した。現在、MIT Unitedには社員の1〜2割が所属しているという。

 「カンパニー単体だけでは過去の知見や営業、編集の力に頼った事業展開に陥りがちだ。しかし、MIT Unitedでは大規模分析など専門性の高い業務を、各事業では各事業の課題を協働で仮説立案からターゲット設計、企画設計、実施までを行ってきたわけである。」(友澤氏)

 ユーザーから学ぶ姿勢とは、かねてからリクルートが得意としていた編集者による「ユーザーを動かす」アプローチに加え、「動いたユーザーから学び、狙い撃ちする」アプローチを実践するための仕組みのことを指す。現在、CGM(Consumer Generated Media)を含めユーザー情報を収集しており、大量のデータが蓄積された暁には「ユーザーから仮説を教えてもらうことが可能になる」と友澤氏は大きな期待を寄せる。万一、仮説が使い物にならなくとも、すぐに捨てれば良いだけなのである。

 最後の最適化とはWebメディアの悪い部分や、より良くできる部分を見つけて改善を繰り返していくことである。そこで鍵となるのが、従来の「考える」−「作る」−「使う」という従来型のWebメディアの利用プロセスに「計測」−「分析」を追加し、PDS(Plan、Do、See)サイクルを回せるようにすることだ。

 「例えば、サイトのコンバージョン率の上げ方はサイトへの流入を増やす方法と、サイトを改善してコンバージョン率を上げる方法の2つに大別される。計測と分析によってその両方を施策別にコントロールし実施することで、どのような対策を採ればよいのかを明確にできるのだ」(友澤氏)

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