未曾有の危機に直面した際に、リーダーはどのようにコミュニケーションをすべきか。危機が発生した際、トップが速やかにメッセージを発する目的を、まずはしっかりと認識してほしい。
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前回は、「未曽有の危機に直面したリーダーに求められること」として、危機が発生した際にリーダーがどのように行動すべきかについて話した。今回は、未曾有の危機に直面した際に、リーダーがどのようにコミュニケーションをすべきかについて話したい。
危機や問題が発生した際にまず企業がすべきことは、トップが速やかにメッセージを発信することである。それは、社内、社外、それぞれに対して必要になる。前回も話したが、福島第一原子力発電所の事故では、トップの発信が遅すぎたのではないかと思う。今になって東京電力の社長が被災地を訪れているが、大きな疑問を持たざるを得ない。
リーダーは社外、社内に対してどのようなことをすべきか、それぞれまとめる。
危機が発生した際にトップが速やかにメッセージを発する目的を、まずはしっかりと認識してほしい。トップがメッセージを発する目的は、迅速に危機に対応するためであり、事実を伝えて、周りの人に正確な情報を知ってもらい、適切な行動をとってもらうことである。そして、パニックに陥ったり、二次災害が起こることを防ぐことである。
リーダーは現状を把握した時点でできるだけ早く会見を開き(ときにホームページ上もアップデートする)、メッセージを伝える必要がある。そのときに伝えることは次のとおりである。
(1)現状で分かっている問題
(2)現状で分かっている問題が起きた原因
(3)今考えている今後の対応策
現状で分かっている問題、問題が起きた原因、そして今後の対応策を包み隠さず話す。ここで大切なのは、とりあえずは現状で分かっていること、今考えていることを話すことである。状況は刻一刻と変化しており、まずは現状について話し、変更が生じればその時点でアナウンスしていけばいいのである。知っているのに言うかどうかをためらっていると、情報を隠していると見られてしまう。
最初にリーダーがメッセージを発したら、その後はスポークスパースンを立てて、できるだけ頻繁に情報をアップデートしていく。スポークスパーソンに求められるものは何だろうか。次の3点である。
(1)事実やデータに基づいて正確に話せる
(2)分かりやすく話せる
(3)冷静でいられる
第1に、事実やデータに基づいて正確に話せる人間を選ばなければならない。時折事実やデータに自分の解釈を入れて話す人がいるが、そのようなことをしてはならない。
第2に、分かりやすく話せることが大切である。「大工と話すときには大工の言葉を使え」とソクラテスは言っている。難しい言葉で説明されても、人は理解できない。誰もが分かる言葉で分かりやすく解説する。特に今回のような原子力や放射能の話は難しい専門的な話も多いので、この部分はより一層求められる。
第3に冷静でいられる人でなければならない。会見を開けば、いろいろな質問が出てきて、ときに答えにくいものや聞いてほしくない内容の質問も出てくるはずである。そこで声を荒げて対応する人は不適切である。どんなときにも冷静に、落ち着いて話せる人物を据えるべきである。
人の発する言葉のうちの65%は、自分をよく見せたい、目立たせたいという気持ちから発言するというデータがある。少し過激に発言したりするのもそのせいである。ただし、危機が発生したときにこのような発言をすると、事態をより一層深刻化させてしまうことになる。このような態度を取らずに、事実やデータに基づいて分かっていることを正確に、分かりやすく話し、冷静でいられる人物を選ぶ必要がある。
余談になるが、テレビのコメンテーターなどは目立たなければいけないということもあり、偏った発言をすることが多いのではないかとわたしは考えている。それにあまり踊らされないようにしなければならないだろう。
繰り返しになるが、スポークスパースンを立てたら、くどいと思われるくらいに、何度も発表していく。ホームページなどにも逐一載せていくべきだろう。多すぎるということは決してない。ほんのわずかなことが分かったら、即座に発表することが大切である。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授