強い日本の再興に向け、国や企業を動かしていくリーダーにはどのような力が必要なのか? グローバル化の進展と日本市場の超成熟化が、ビジネスの多様性を大きく高めた。さらに、この度の震災は日本企業にBCPの必要性を改めて突きつけ、今後の成長戦略策定の難易度を上げた。このような環境下で変革を成功裏に収めるためには、国も企業も「自前主義」にこだわってはならない。自身よりも優れた、あるいは自身の足りない部分を補完してくれる能力を持つ他者をうまく巻き込み、最終的な目的を達成するためのプロセスと場をマネジメントするリーダーシップが求められるのである。
5月6日、菅首相は中部電力に対し浜岡原子力発電所全号機の停止を要請した。東日本大震災の福島原子力発電所の問題を受けての対応である。現在の福島原発にまつわる諸問題を鑑みると、ある意味英断と言えるかもしれない。しかし、政財界からは反発の声も挙がっている。なぜこのような結果となってしまったのであろうか? このような決断、行動を起こすためには、本来どうするべきだったのだろうか?
浜岡原発を有する中部電力が管轄する地域は、トヨタをはじめとした日本の製造業の集積地の1つである。ここでの電力供給量を左右する決断をするためには、その影響の有無、対応策オプションを検討する必要があることは言うまでもない。
つまり、浜岡原発の停止をスムーズに進めるためには、まず中部電力と
を検討した上で、影響を受ける可能性のある大口需要家と
を議論し、政府として対応可能な支援策も俎上(そじょう)に載せた上で行動に移すべきだったと言える。
さらに、より広範囲に事象を見れば、福島原発の問題を抱える東京電力への中部電力の支援、および他電力会社も含めた支援内容まで検討しておく必要もあったと言える。
何かを決断し、行動に移すためには関係するステークホルダーとの事前の協議は必須である。さらに、より良い結果を得るためには、外部の優れた能力を持つ他者(上述の事例では、海外の公的機関や企業など)との協業も検討し、必要な協力を得られるように行動すべきである。必要な他者を巻き込むこのような力は、有事の時ばかりでなく、一企業が変革を行っていく際にもこれを実行するリーダーに求められる能力だと言える。
今回のコラムからは、現代のビジネスリーダーに求められる「巻き込み力」に関して、ケースも交えながら解説していく。その第1回として、今回は上述のようなリーダーシップを発揮するリーダーの定義と要件を解説する。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授