上司は部下の盾になっているか〜その1生き残れない経営(1/2 ページ)

幹部研修会でとりあげるべきテーマは、“部下の「盾」になるには”ではないだろうか。これほどしかも日常的に部下が悩んでいて、さらに企業業績に少なからぬ影響を与えているはずなのに。

» 2011年09月05日 07時00分 公開
[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]

 企業人としての本来の業務、あるいは創造的な業務を、上司や社内関連部門、あるいは会社のOB、社外などからディスターブされることに困惑したり、腹立たしく思ったりする経験は誰にでもあろう。その時、上司(経営者、幹部、管理者すべて)は部下をディスターブから守っているか、いや、上司自身が部下をディスターブしていないか。上司は本来、ディスターブから部下を守る「盾」になるべきではないのか。

 「優れたボスは“人間の盾”となることに誇りを感じ、社内外からのプレッシャーをみずから吸収するか、はねのける。そしておもしろみのない瑣事をみずから引き受けて、部下を働きにくくするような愚か者や余計な口出しと闘うのである。」と、ロバートI.サットン スタンフォード大学教授は主張する(「Diamond Harvard Business Review」2011.2.)。

 考えてみるに、企業内外に存在する多くの幹部研修会では、企業戦略の立て方や部下のモラールアップやB/S、P/Lの読み方などをテーマとして取り上げるが、部下の「盾」になるテーマについて取り上げるケースをついぞ見かけたことはない。これほどしかも日常的に部下が悩んでいて、さらに企業業績に少なからぬ影響を与えているはずなのに。

 部下がディスターブされて困惑している実例を挙げながら、上司が「盾」となって部下を守るために心得るべきことを考えていこう。

 1、部下に「干渉」することがマネジメントだ、あるいは任務の1つだと誤解している上司が多い。例えば、(1)週報がある。配下の部長に週報を書かせる経営者、その週報のネタ集めにさらに部下に週報を書かせる部長、屋上屋が重なる。週報に大きな問題を書くと、大変な跳ね返りがある。一方良いことばかりも報告できないので、無難なテーマを選ぶのに神経と時間を浪費する。週報を受けた方は、報告のあった問題に有効な手を打ちもせず、要するに週報を目の前にして情報を把握したつもりでいるだけだ。そして、幹部会議で週報から拾ったネタを披露して、現場に精通している風を装う(実際に、そういうエレクトロニクス系大企業の副社長がいた)。

 (2)「お客の所へ連れて行け」と営業に要求する幹部がいる。営業は、困惑しながら時間を工面して無難な顧客に案内する。顧客から宿題が出ると、そのまま営業に投げる幹部、要するに「オレは第1戦を歩いている」というポーズをとりたいのか。某中堅企業の営業は、顧客から「あの社長だけは連れて来るな。応対時間がもったいない」と言われている。(3)日頃の業務に、何かと首を突っ込む上司がいる。そしてあれこれ口を出してアドバイスをしているつもりだろうが、創造的業務の邪魔をしていることに気づかない。

 2、上司の「好み」とも言える代物に、つき合わさせられることだ。例えば、(1)情報機器メーカーの某大企業では、幹部が出席する会議の資料が立派で膨大だ。これは社長指示によるもので、資料の見た目が貧弱だと社長はご機嫌が悪い。関係部門は、幹部出席の会議があるたびに途方もない手間と時間をかけて、膨大な資料を作る。しかし内容をよくよくチェックすると、部門間での重複記述が随所に発見される。しかも会議終了後、膨大な資料は各人の棚の奥へ仕舞い込まれ、その後の出番はほとんどない。

 (2)予算や収益フォローアップなど業績に関わる会議の席上資料はオンライン画面を見ながら進めるという、中堅鉄鋼メーカーの性急で強引な社長方針がある。しかし実態は、データのインプットやメンテナンスがオンラインでとても追いつくレベルにない。担当者達は苦肉の策で、会議資料を予め手作業で作成して、ただ画面に表示する。その取り繕いのために、担当者達は会議のたびに手間と時間を浪費している。

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