前回は、サムスン電子のCEOが情報を活用するために、システム面のみならず、組織の面でも徹底した取り組みをしていることを紹介した。今回は、その背後にある考え方を学び、日本の企業を強くするヒントを導き出して行こう。
前編:「韓国企業の強さの秘密は「情報」重視の経営」
サムスン電子がSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)に取り組み始めたのは1990年台初頭のことだ。しかし、同社が全世界で機能するシステムを導入できた成功要因を探ってみても、「こういうITシステムを組んだから成功した」というような、ITに起因する答えは一向に返ってこない。返ってくる答えは、「韓国市場は限界がある。成長するためには海外進出せざるを得ない。そのために取り組んできたのが成功の要因」といった経営視点のものばかりで、一見システムとは無関係に聞こえるのである。
このことが意味しているのは、サムスン電子が世界中の生情報を把握できるようになったのは、単にシステムを導入したからではなく、情報を把握する事が企業として必須という認識の下、「システム以外の仕組み」にも取り組んできたということだ
「システム以外の仕組み」というのは、前回説明した「Management Informationチーム」が主導する組織的な取り組みのことで、各事業体の責任者が自らシステムを使い、関連する情報の品質を保たざるを得なくなるよう、このチームが強制力を効かせるのである。ポイントは、このチームが各事業体責任者の人事権までを握っていることにある。
もちろん他の企業でも、情報の質を保たせるために、情報を提供する部門(売上情報なら販売店)ごとに責任者を任命し、システムを活用させるための組織づくりを行っているところもある。しかし、情報の質の担保させるために、情報責任者の人事権まで握っているような組織づくりをしている企業にはお目に掛かったことはない。
逆に、情報の質を損なう例は多数目にしたことがある。ある企業では、マーケティングのための情報を、システムを使って集めることになった。しかし、情報の入力項目が埋まっているかどうかだけを指標にしたため、結果として集まった情報は、全く意味のないものが大半になってしまった。要は情報集めではなく「ゴミ集め」になってしまったのである。実のところ、情報を集めるには、お客様への聞き取り調査を実施する必要があり、かつ、それこそがその企業のトップの狙いだったのだが、現場では聞き取り調査はほとんど実施されなかった。
では、このような事態が発生する企業と、サムスン電子の違いは何であろうか?
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授