「もっと創造的に! 」と号令は掛かるが、どうすればいいのか悩んでる会社が多いだろう。その原因は思わぬところで変化を妨げている、社内コミュニケーションにないだろうか。
あらゆる職場のコミュニケーションに問題が起こっています。いや、それ以上に、問題を抱えていても、そのことに気付いていない職場の方が多いかもしれません。事業の成長が止まってしまった。新しいアイデアが出てこない。組織に閉塞感が漂っている。そういうときには、社内のコミュニケーションに原因がないかと疑ってかかる必要があります。
コミュニケーションというと「上手に話す」「上手に聞く(聴く)」「良好な人間関係を築く」といった目的のための、個人のスキルやテクニックと捉えられることが少なくありません。しかし個人がスキルを身につけただけで、社内のコミュニケーションは変わりません。どんなに上手に話せるようになったからといって、それだけでアイデアがどんどん出てくるわけがありません。
組織のアイデアはコミュニケーションによって生み出されます。そのため、コミュニケーションのあり方によって、創造的なアイデアが湧きだす組織にもなれば、常識的なアイデアしか生まれない組織にもなるのです。その差がどこにあるかを知ることが重要です。
本連載では、「伸びる会社のコミュニケーション」をテーマとして、知らず知らずのうちに、創造性を失い、変化を拒むようになってしまっている職場のコミュニケーションを、どのように見直していくべきかについて、述べていきたいと思います。コミュニケーションが変われば、会社はまだまだ成長できる可能性があります。
斬新なアイデアが出てこないと嘆く経営者が少なくありません。例えば、人口減少によって国内の市場が伸び悩む中で、画期的な商品を投入しなければ、売上成長は望めません。過去のヒット商品の成功体験も脳裏に染みついていて、なぜ今の社員はこんなに発想力が乏しくなってしまったのかと、いら立ちを抑えることのできない経営者もいます。
A社では、商品企画の担当者が、経営者から責められることが少なくありませんでした。担当者が新商品のコンセプトを説明しようとしても、すぐに言葉を遮られ、「こんなアイデアではだめだ」と否定されてしまいます。しかし、毎回、そういうことが続くと、担当者も学習していきます。経営者が好みそうなコンセプトや資料の作り方を覚えることによって、頭から否定される回数は減っていきました。けれども、ヒット商品が生まれることもありませんでした。
担当者の発想力が不足していると考えた経営者は、スキル向上のために、マーケティングのコンサルタントを雇い、市場調査から商品開発に至るプロセスをマニュアル化しました。また、マーケティングの理論や手法に関する研修も、何度も実施しました。その結果、商品企画の業務は、以前よりもずっと論理的に行われるようになりました。経営者は少し満足しましたが、やはり、ヒット商品が生まれることはありませんでした。
そもそも、この会社の商品企画担当者はきわめて多忙でした。同時並行的に、複数の案件を進め、しかも、経営者からはスピードが要求されています。1つひとつの案件に時間をかけることができないため、チームで仕事をしているものの、担当者同士で企画について、話し合われることはほとんどありませんでした。担当者にとっては、まるでマニュアルに従って、流れ作業をこなしているような感覚でした。
皆さんは、この会社の例を読んでどう思いますか?
おそらく、このようなコミュニケーションが支配している職場から、斬新なアイデアなど生まれるはずがない、と感じるのではないでしょうか。たとえ、1人ひとりの担当者がどんなにクリエーティブな人であったとしても、組織が生み出すアイデアの創造性はコミュニケーションのあり方によって左右されるからです。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授