「主張しないと、自分が損するよ」 大学を卒業して英国系の航空会社で客室乗務員として働き始めたときに、ある日本人の先輩から言われた言葉です。客室乗務員は複数でチームを組んで働くのですが、パーサーから指示がきます。そのときは、パーサーが指示したことを新人のわたしに割り振って、休んでいる欧米人クルーが何名かいたのです。
航空会社に入ったばかりのわたしはとりあえず必死でした。いわれたことはすべてきっちりとやらなければいけないと思い、周囲の人は休憩しているのに、わたし1人だけお客様の相手でてんてこ舞いになっていました。
そんなときにこの言葉を先輩に言われたのです。
思い切って、外国人クルーに言ってみました。「わたしはこちらの通路からくるお客様のケアをするから、あなたはあちらの通路からくるお客様のケアをしてくれますか」しっかりと話すと、理解してくれたようで、指示通りに動いてくれました。
日本人は10できるのに、1しかいわない。一方で欧米人の中には、1しかできなくても、10できるという人がいる。過大に言う必要はないですが、良いものをもっているのであれば、自信を持って声を大きくして主張していく必要があります。
このシリーズのテーマである、「グローバル化」。少し前までは国際化というと、「インターナショナル」という言葉を使っていたでしょうか。今はインターナショナルからグローバルの時代になっています。
「インターナショナル」というと、国(nation)の間(inter)なので、主に2国間の関係でしょうか。「グローバル」はglobe(地球、世界、天体)から派生した言葉で、世界を1つととらえる考え方。IT革命によって、インターナショナルではなく、グローバルな時代。違いはあるけれど、世界を1つのマーケットとして考えていかなければ、成果を残せません。「人種」に関係なく、人として尊重し接していくことが求められます。
なお、「グローバル」なコミュニケーションだから英語が必要だろう、といわれますが、もちろん英語ができたらコミュニケーションはスムーズになるかもしれません。ただし、絶対条件ではないと思います。人が相手に持つ印象においては、言葉よりも、ボディランゲージや言い方の影響のほうがはるかに大きいのです。第一印象を決定する要素はビジュアル(視覚情報)、ヴォーカル(聴覚情報)、バーバル(言語情報)の3つです。その割合は次のとおりです。
バーバル(何を言うか)はわずか7%しか占めていません。言葉を流暢に話すことよりも、たとえたどたどしくても、はっきりと明確な意思を持ってゆっくり伝えたほうが相手にははるかに伝わるのです。
グローバル時代に求められるのは、共に学び、共に進む姿勢。今、スマートリーダーに必要なコミュニケーションについて、事例などを交えながら述べていきます。
林正愛(りんじょんえ)
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ、ファイナンシャルプランナー、英検1級、TOEIC955点。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。British Airwaysに入社し、客室乗務員として成田―ロンドン間を乗務。その後中央経済社にて経営、会計関連の書籍の編集に携わった後、日本経済新聞社に入社し、経営、経済関連の書籍の企画および編集を行う。2006年4月に退職し、「眠っている才能を呼び覚ませ」というミッションのもと、優秀な人たちが活躍する場を提供したいという思いから、同年10月にアマプロ株式会社を設立。仕事を通じて培ってきたコミュニケーション力や編集力を生かして、企業の情報発信をサポートするために奔走している。
企業の経営層とのインタビューを数多くこなし、その数は100名以上に達する。その中からリーダーの行動変革に興味を持ち、アメリカでエグセクティブコーチングの第一人者で、GEやフォードなどの社長のコーチングを行ったマーシャル・ゴールドスミス氏にコーチングを学ぶ。現在は経営層のコーチングも行う。コミュニケーションのプロフェッショナルが集まった国際団体、IABC(International Association of Business Communicators) のジャパンチャプターの理事も務める。2012年4月からは慶応義塾大学メディアデザイン研究科でも学ぶ予定。著書『紅茶にあう美味しいイギリスのお菓子』(2000年、アスペクト)。2児の母。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授