今までの価値観が通用しない時代、リーダーに求められる資質も変わってきている。企業の未来のためにもリアルリーダーを見抜く目が必要になる。
「ヘッドハンター」という名称を知っていますか。
最近は日本での知名度も上がり、テレビや雑誌などにも登場するようになりましたが、まだまだその存在は曖昧です。転職を望んでいる人に適切な企業を紹介する仕事に携わっている人を総称してヘッドハンターと呼んでいる場合もあれば、「ヘッドハンティング」する人、つまり他の会社から優秀な人をハンティング(引き抜く)する仕事に従事している人がヘッドハンターと名乗っている場合もあります。ちなみに、発祥の地である欧米では後者を指します。
いつの時代でも、特に混沌としている変革期ほど、権力者たちは有能な補佐役や参謀を探し求めます。例えば呉の闔閭(こうりょ)における孫武、あるいは蜀(しょく)の劉備(りゅうび)における諸葛孔明のような存在です。そのような人物を側近として抱えることで世の中を制してきました。
時代が移り変わっても優秀な人材の争奪戦は熾烈です。その獲得いかんでビジネスの勝敗が左右されるといっても過言ではない近年「ヘッドハンター」という「優秀な人を探し出して引き抜いてくる専門職」が生まれたのも必然の流れでしょう。
わたし自身も数々の経営者に幹部層や専門職のリーダーたちを紹介し、その企業や組織が変わっていく有り様を身近で見てきました。人と人とを繋ぐことが自分の使命なのではと感じていたわたしにとって、まさにこれこそやりたかった仕事で天職を得ました。この18年間仕事とプライベートの境もなく無我夢中で働いてきたお陰で、さまざまな人たちと出会えました。
この経験を基に、激動の時代に必要とされているリーダーとはどういう人物なのか? 「ヘッドハンター」という仕事を通して常に考えながら、企業や組織にリーダーを紹介しています。そのリアルな実体験を基に、多少の独断と偏見も交えて「リアルリーダー」について話をします。
「リアルリーダー」とは、今の時代においてどういう人であるべきでしょうか?
わたしは、地域や国を超越した真のリーダーに必要な資質とは、「思っている事と言っている事とやっている事」が一致している人だと考えます。
もちろん、うそをついたことがないという人はいませんし、ビジネスにおいてはすべてを正直に話せばよいとは思っていませんが、最終的に「思考・言葉・行動」が一致している人は、饒舌でなくても気の利いたセリフを吐かなくても存在感があり、周りの人から一目置かれ信頼も得ている気がします。
そのような人は、自分を信じる力があり、物事をありのままに見ることができ、ブレがなく、周りの人たちの意見にも耳を傾け、きちんと受け容れた上で自分自身で考え、判断ができるようです。
「リアルリーダー」というからには、今までのリーダーとどういう点が異なっているのでしょうか?
高度成長期時代の日本のリーダーは、高学歴で管理能力に長けている調整型が多く、責任の所在をはっきりさせず全体責任という社会主義スタイルでした。「お上」という概念がまかり通り、国(政府や役所)が決めたことに従ってさえいれば、業界も企業もともに成長できると信じ実際に急成長してきました。その後バブルが崩壊し失われた10年といわれる時代は、それまでの成功体験が忘れられずひきずっていた時代だと思います。
今は、国という概念も超えてビジネスを進める必要があり、世界と戦うためには自分たちの意見や思いを明確に伝える必要があります。
こういう時代の「リアルリーダー」には学歴に関わらず、人と人との縁や絆を大切にし、自分や自分の属している組織や企業の利益だけを考えるのではなく、世の中全体をよくしていこう、世界によい影響を与えたいという高い志を持つ人が求められているのではないでしょうか。日本人は元々自分のためよりも人のためにエネルギーを向ける民族ですので、方向性を示せるまっとうなリーダーが出てくればそれに向かって一丸となることができます。
そのためにも、「リアルリーダー」には「自分の言葉」で熱く語り、実際に自ら率先して行動し、世の中を変えていってほしいと願っています。また、今までの価値観が通用しない時代なので、リーダーを抜擢する際にも現状のスキルや実績だけで判断することなく、豊かな発想を持ち既存の枠にとらわれずに新しい価値観を生み出し、変化を起こせる人を選ぶべきだと思います。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授