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» 2012年04月06日 08時00分 公開

【新連載】ヘッドハンターから見たリアルリーダーとは? :「思っている事、言っている事、やっている事」が一致しているか (2/2)

[石元聖子(ラストラール),ITmedia]
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リアルリーダーの見極め方

 「どのようにして人を見極めていくのですか?」30代に入り、この仕事を始めてからよく投げかけられる質問です。正直なところ人を見極めることはとても難しいことだと感じています。ですから「人は判らない・判った気にならない」ことが人と向き合うときの大前提だと考えています。とは言え、仕事柄何らかの基準で判断せざるを得ない立場でもあります。

 その際、わたしが大事にしていることは「言っている事ではなく、やっている事」を見るようにしています。言っていることに囚われてしまうと見えなくなってくることもありますが、シンプルにただやっている行動を観察していくと、その裏に潜んでいるその人のものの見方や価値観、優先順位、熱意そして誠実さなど、その人独自の「思考」がおのずと浮かび上がってきます。その一つ一つの行動を見て真のリーダーとなり得る人物なのかを判断しています。

 今の時代の「リアルリーダー」として思い浮かぶ人物を紹介します。

 その人物とは14〜5年前、彼が20代の後半のときに初めて出会い、とても印象的だったことを覚えています。彼はアメリカで一流大学の工学部に入学しましたが、世界中の優秀なエンジニアが集まるその大学では上には上がいることを知り、エンジニアとして生きていくことに限界を感じたそうです。考えた末、その領域で勝負するのではなくマネジメント、経営のプロになろうと決意して、同じ大学のMBAを取得しました。その後アメリカに本社を置く企業に入社して実績を上げ、日本オフィスの立ち上げメンバーとして来日しました。わたしが会ったのはその頃です。

 にこやかに笑い、謙虚な物言いや立ち居振る舞いの中にも隙がなく、まるで軍人のような規律を重んじるリーダーの風格があり圧倒された記憶があります。1時間ほど話をしてお互いに波長も合い、早々に彼の部下2人の採用プロジェクトを引き請けることになりました。そのとき「石元さんを信用します。このポジションは他のエージェントには頼みませんので、是非良い人を探してください」と言われました。

 このように言われると、何としてでもぴったりの人を紹介しようという意欲が掻き立てられます。高い技術を持つ会社であり、若手のポジションながらも技術の分かる優秀なマーケーターで即戦力となれる人、単にスキル、経験だけではなく高い目標を設定して常に成長し続けられる人が必須の条件。しかも、チームワークを重んじコミュニケーションを大切にする社風なので、その適正もある人というとても厳しい採用条件でした。

 決して妥協しない彼の性格もあり、プロジェクトは難航し想定していたよりも時間が掛かってしまいましたが、その間も約束どおり他のエージェントに頼むことはせず、信じて任せてくれました。わたしもあらゆる方法を通して徹底的に該当しそうな候補者を探し出し20数人と会った上で、彼の期待に応えられそうな候補者に限定して紹介し最終的に2人の採用が確定しました。

 そのプロジェクトを通して彼から感じたリーダーとしてのあるべき姿とは、「不用意なことは言わないが、言ったことはきちんと守り、また相手にも守らせる厳しさもある」「中途半端な妥協はせず、誰よりも厳しく自らを律しながら仕事を推進する」ということでした。

 候補者に説明するときにも、この会社は人が成長できる良い環境の会社であり、人間的にも尊敬できる上司と働けることが一番のメリットだと自信を持って薦められました。その時入社した2人は部下として鍛えられ、成長していく姿を見られたことはとても懐かしい思い出です。

 数年後に彼は日本事務所の社長となり、体制を一気に変えて大変革を成し遂げ、かなりの高利益を出せる組織を作り上げました。何としてでもやり抜くという不退転の決意を全社員に伝え自ら率先して行動したと伝え聞きました。その間も数々の試練があったはずですが、それを乗り越えたからこそ達成できたのだと思います。今でも日本支社は本国本社から一目置かれる存在となっているようです。 

 彼のような「思っている事と言っている事とやっている事」が一致している人が変革を推進する際には、最も適しているリアルリーダーなのでしょう。

 次回は、リーダーに求められる人間性について話します。

著者プロフィール

石元聖子

大学卒業後、専門商社7年、外資系銀行2年、中堅アパレル会社2年とそれぞれの業界で貿易事務の仕事に従事した後、「人」をキーワードとし、独自のスタイルで仕事ができないかと模索していているときにヘッドハンターという仕事があることを知り、この業界に入る。スタントチェイス・インターナショナル(業界内でトップ10に入るグループ)東京にてエグゼクティブ・パートナー(株主でもある共同経営者)として10年間勤めた後 2005年にラストラールを創設、代表取締役社長となり現在に至る。


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