このような時代、リーダーには何が求められているのか。夏野氏は、「最後の拠り所は自分の信念」と語る。
「ドコモ時代を振り返ると、未来に向かって石を投げていくイメージだった。1年ほど進むと、前に投げた石が自分の近くに落ちてきて、“うまく行っているな”という感触が得られた。新しいサービスの仕込みには長い期間が必要で、iモードは1年半、FOMAの立て直しを図った900シリーズは1年、おサイフケータイは3年くらいを要している。そうやって石を投げ続けてきた」(夏野氏)
当然、蓋を開けてみるまでは、その仕込みの結果がどうなるか、誰にも分からない。もちろんリーダー自身にも。どうしても不安がつきまとうものだ。しかし、だからといって安易にマーケティング調査などに頼っていてはいけない、と夏野氏は指摘する。
「対価を払う人のニーズは時代の環境変化に応じて変わる。マーケティングに基づいて出せば成功するような時代は80年代で終わった。マーケットの声、顧客の声を聞いて開発するというのは、今やナンセンス。全く新しいサービスや商品に関するアンケートを行っても、顧客というのは、想像できないことに対してはネガティブな評価をしがちなもの。しかし、それを実際に出してみると売れたりする。そういう声に惑わされず、実際に対価を払う人の立場になって考えればいい」(夏野氏)
例えば、3年の仕込み期間を要した「おサイフケータイ」は、夏野氏が「小銭嫌い」だということが発端となった。氏は一人の消費者として、小銭を持たずに出歩ける、買い物ができるような環境を求めていたのだ。だからタクシーやコンビニ、駅売店などへ重点的に売り込んでいったという。
「今や、どっちの方向にも行ける世の中となっている。リーダーはプリンシプルを持っていること、ディレクションを持っていることが重要だ。そして、決めたらやることも大事。責任は、より重くなっている。しばしばガラパゴスと揶揄される日本だが、実は日本こそコンシューマーのレベルが世界一高い国で、最先端のサービスを生み出す土壌があると思う。同じものを海外に広める際には多くの課題があるが、それでも可能なものはきちんと海外に進出している。かつてのモノ作り時代には、日本製品は海外に広く売られていた。今はコンテンツ時代、やはり海外でも売れるものは進出している。リーダーシップさえあれば、それが可能なのが日本という国だ」(夏野氏)
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授