「みんなのため」「組織のため」となる仕組みを作る。個人の能力を発揮させながらチームに貢献させる、これがリーダーのすべきことである。
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ロンドンオリンピックで史上最多のメダルを獲得した日本。今回のオリンピックでは特に団体戦の活躍が目立ったように思う。なぜ彼らは成果を残せたのだろうか。
<事例>
システムソフトウェア会社の営業部のM部長はある悩みを抱えていた。部下はみな優秀なのだが、お互いをライバル視し、全然協力し合わないのである。どうしたらその状況を解決できるか、考えあぐねていた。毎週の定例会議での出来事。
M部長:○○案件だけれど、どうなっているかな?
D君:先日Fさんと一緒にクライアントのところに行ってきました。私は聞いた話をまとめ、それをFさんに渡したので、そこからは彼女がいろいろと検討してくれる予定です。
Fさん:えっ? まとめていただいたのはもらいましたが、それをどう使うかは2人でミーティングをして話すと言っていませんでしたか。
M部長:どうなっているのかな。
D君:いや、僕は今○○社の件で忙しく、深く関わるのはむずかしいのです。
Fさん:私もいそがしいです。それにこの案件はDさんが持ってきたのですよね。
M部長:まあまあ、それでは、Y君、Fさんと一緒にやってもらえないか。
Y君:いや、僕も今自分のことで手いっぱいでやる時間がありません。
M部長:……。
協力し合おうとしない部下たちを見ながら、どうしたものかと考え込んでしまった。
お互い忙しいと言って協力し合おうとしない。成果主義の弊害とも言えるのではないかと思っているのだが、人事評価は、どんな成果を残したか、個人で評価をされことが多いので、協力し合おうとしない傾向が出てくる。結果として、M部長が悩んでいるように、お互いが協力し合わず、自分のことばかりを考える組織になってしまう。
翻って、今回のロンドンオリンピックの選手たちは個人戦でももちろん頑張ったが、団体戦で目覚ましい成果をあげた。競泳・背泳ぎの入江陵介選手が個人のメダルを取った際にも、水泳は日本チームで戦っているので、団体戦まで気持ちを切らさずに頑張りたい、というようなことを言っていたのがとても印象に残っている。結果として男子競泳は、400メートルリレーで銀メダルを獲得した。
卓球の福原愛選手は個人戦では思うような結果を出せなかったものの、団体戦で勝利し、メダルを手にした。銀メダルを獲得したサッカー女子はもちろん素晴らしかった。一方で、男子も初戦でスペインに勝って勢いに乗り、惜しくもメダルは逃したが、見事な戦いぶりだった。その他にもフェンシングやバドミントン、アーチェリーなど、多くの団体戦で健闘した。
個人も大事だが、チームワークを大切にする―それが日本人の強みではないかと改めて考えさせられた。その気持ちの根っこにあるものは何だろうか。
わたしは「貢献」ではないかと思う。「人のために、チームのために」という精神を持ち、目の前にいる仲間を勝たせる、チームで勝つ、という意識を持つ。そのことによって人間の持っている潜在能力が最大限引き出されたのではないだろうか。一体感はかけがえがなく、何物にも代えがたい。チームになることで、自分たちでも考えられないような力が発揮される。何かを超越した力が出てくる気がしてならない。
わたし自身、以前生命保険会社の営業部で働いた頃に、当初は個人プレイを重視していたが、途中からチームでやるということを重視し、お互い支え合うことで、大きな成果を上げることができた。「For the team」という精神の大切さを改めて感じさせられた。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授